「『浪費等』の免責不許可事由があっても、直ちに免責不許可になるわけではありません。その程度に応じて、『反省文と家計簿を提出する』『免責審尋を経る』『口頭審査で個別の訓戒を受ける』『免責観察型の管財手続に移行する』などの方法によって免責が受けられることが多いです。この点は誤解がないようにしていただきたいと思います」(飯田弁護士)
実際、大阪地裁では昨年度、免責事件終局件数4973件のうち免責不許可は11件にとどまっている。破産の申立後もギャンブルを続けて破産管財人の調査を拒否し、債権者集会も欠席したといった悪質なケース以外は免責不許可に至ることはあまりない。今回の書式改訂も、あくまで債務の中にゲーム代が含まれることが増えてきたから、裁判所としても情報を把握するために対応しただけのようである。
「したがって、ゲーム代で多額の債務を抱えている方も、『免責は受けられない』と絶望せず、一度弁護士に相談してみてください。無理なゲーム課金を断ち切って経済的に立ち直るつもりさえあれば、お力になれると思います」(同)
飯田弁護士は、大阪弁護士会制作の裁判員裁判を忠実に再現したゲーム『ゲームで裁判員!スイートホーム炎上事件』の制作を統括した経験を持つ。ゲームに対する思い入れは人一倍強い。
「私は趣味でゲームをつくっていますが、ゲームは本来、人を楽しませるためのものだと思っています。そのゲームで経済的に追い詰められ苦しむ人がいるとしたら、あまりに哀しいことです。料金を支払ってゲームする場合でも、ユーザーは自らきちんと上限を設けて、無理のない範囲で楽しむようにするべきです」(同)
以前から、射幸心を煽るソーシャルゲームは問題視されている。多額の浪費を招き、破産の原因につながる事態が広がれば、ゲーム市場全体にも悪影響を及ぼしかねない。社会問題として本格化する前に、課金制限を定めるなどソーシャルゲームに対する適切なルールづくりも必要な時期にきているのではないだろうか。
(文=関田真也/フリーライター・エディター)
【取材協力】
弁護士 飯田幸子
京都大学法学部卒業。京都大学法科大学院修了。2008年弁護士登録。増田・飯田 法律事務所パートナー。主な業務分野は、倒産、企業再生、会社法務、一般民商事、著作権法。