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安倍政権、不可能な原発再稼働前提のエネルギー計画推進…核燃料サイクル計画も継続

文=北沢栄/ジャーナリスト
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安倍晋三首相(写真:日刊現代/アフロ)

 関西電力幹部の金品受領事件で、政府の原子力発電所再稼働政策が停止に追い込まれる可能性が高まった。電力会社の経営者らが「原発マネー」を発注先の地元業者側から受け取るという倒錯した経営不祥事から、原発・大手電力会社への国民の不信・不安感が一挙に深まったためだ。

 事件の影響は広がる。関電が来年に目指す安全対策工事を実施中の高浜原発1、2号機の再稼働を困難にするばかりか、建設後40年以上たつ再稼働中の高浜3、4号機も運転停止に追い込まれる公算が強まった。

 関電不信はほかの電力会社にも波及し、再稼働にブレーキをかける。現在、東京電力の柏崎刈羽原発(新潟県)は依然再稼働のメドが立っていないが、同事件で再稼働はなおさら難しくなる。原子力規制委員会は今年4月、テロ対策施設の設置が期限に間に合わない場合、運転を停止する方針を決定した。九州電力と四国電力は共に施設の完成が期限に間に合わない。九電は川内原発(鹿児島県)1、2号機が期限切れ直前の2020年春に、四国電は伊方原発(愛媛県)3号機が21年春に運転停止を余儀なくされる。

 10月末現在、全国の原発で再稼働しているのは、工事中や定期検査中を除き全部でわずかに6基。関電がうち半数を占める実績が示すように、福島第一原発事故後、東京電力に代わって国内の原発事業の再建を主導してきた。事件に連座した関電の岩根茂樹社長が大手電力10社の業界団体、電気事業連合会の会長を務めたのも(事件を受け辞任)、東電に代わる電力業界のリーダー役を果たしていたためだ。その関電が事件で信用を失墜させ、再稼働に向けた業界の努力を台無しにしてしまったのだ。

原発再稼働の前提条件とは

 原発を再稼働や新増設するための基本条件を見てみよう。再稼働を実現するには、まず原子力規制委員会の審査に合格する必要がある。合格するには、福島第一原発事故後に安全対策を厳しく定めた新規制と、その後追加されたテロ対策などに適合しなければならない。各社は、多額のコストがかかる古い原発設備の改修か廃炉かの選択を迫られる。仮に規制委の審査を通り、設備の適合判断が下されたところで、最難関となる原発周辺住民の同意が待ち受ける。

 関電事件は、この住民同意の可能性を吹き飛ばしてしまったかに見える。同意どころか、原発差し止めを求める住民訴訟が各地で相次ぎ、目下、全国の原発14基をめぐって係争中だ。だが、政治の舞台は別だ。政権だけが原発再稼働に固執する。財界の既成勢力と手を携え、原発重視の第5次エネルギー基本計画の実現を追求してやまない。

 基本計画では、2030年度の電源構成に占める原発の割合を「20~22%にする」目標を掲げる。だが、達成には稼働原発30基ほどが必要とされ、実現は土台不可能だ。しかも、どの世論調査を見ても、人々の過半数は原発に不安を表明し、再稼働に同意していない。目標はもはや現実的でない。「原発ゼロ」に向けた見直しが必要だ。

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