――地方私大は全般的に厳しい環境に置かれていますね。
木村 平成の後半に入ると、少子高齢化を反映して医療系大学が増えました。たとえばこの17年に開学した私大は、すべて医療看護系です。
また、平成の時代に個性派大学の評価が高まりました。秋田県の国際教養大学(公立)は授業がすべて英語であることで知られていますが、難易度は旧帝国大学並みです。福島県の会津大学(公立)は情報科学で存在感を示し、学内に復興支援センターを設けるなど、地域貢献の面でも注目を集めています。また、大分県の立命館アジア太平洋大学(私立)は海外留学生が多く、キャンパスで国際交流ができると評判です。
一方、開学したものの志願者が集まらず、経営に行き詰まっている大学も少なくありません。定員割れになった大学は淘汰されるべきとの意見もあります。確かに、特に短大や女子大から四年制に昇格したものの特徴のない大学は、思い切った改革を断行する必要があるでしょう。そうしなければ、今後は廃学が続出する可能性があります。
大学をめぐる文科省と財務省の思惑
――国立大については、いかがでしょうか。
木村 高知県、島根県のように、地方には国公立大のみで私大がない県があります。そこで、地方創生・地域振興のプラットフォームのひとつとして、地方の国立大への期待が高まっています。しかし、実際には地方の国立大は国の運営費交付金の査定が厳しく、経営的には苦しい立場に立たされています。
特に厳しいのが教育系の単科大学です。愛知教育大学、宮城教育大学、京都教育大学、奈良教育大学などがあり、小学校教員養成課程に強みがあります。ところが、これらの教育系大学の運営交付金の配分が厳しい状況です。一方で、小学教員課程はこれまで国立大がメインだったのですが、関西大学、関西学院大学、立命館大学、早稲田大学などの私大が参入してきました。附属小学校の教員を自前で養成できるメリットがあり、経営基盤の安定にもつながります。また、中堅私大でも小学校教員養成課程新設が増えています。
教員養成課程は設備的なコストはあまりかかりませんが、国語、社会(地理歴史・公民)、数学、理科、英語、音楽、美術など学ぶ専門分野が多く、教育心理などの専門分野もバラエティに富んでいます。そのため、有名私大でも総合的なコストがかかるのです。これを私立大にシフトさせるという狙いも文部科学省にあるのでしょう。
『「地方国立大学」の時代 2020年に何が起こるのか』 平成に大きく変わった国立大学。少子化の影響に加え、2020年には入試改革を控えるなど、この先さらに激変が起こるのは間違いない。そこで教育ジャーナリストがここまでの歩みと最新状況を整理。特に「地方」から「世界」の大学になるべく広島大学が進める改革を追い、その未来を提言する。データが教える各校の「真の実力」とは? 大学は高校生の夢をどこまで叶えられる? 地方消滅目前、日本の危機を地方国立大学が救う!