報じる1月30日付毎日新聞より
『自民党大物代議士の秘書、三重の公共事業をめぐる“不可解な”口利き疑惑』
6年前、「羽田空港D滑走路」建設の舗装工事で使用する岩ずりの積出港として、三重県度会郡南部に位置する南伊勢町の吉津港を使う案が浮上したが、地元漁民の反対や制度上の問題等が山積していた。そこで、津波対策として防波堤をつくり、「公共工事」として地元にお金が落ちれば、漁民の反対だけでなく、制度上の問題も解決される。ひいては、町の経済も潤う、ということで「三重県南伊勢町吉津港津波対策等研究会」が立ち上げられた。
と、ここまでが前回書いた内容だ。
手元の資料によると、研究会は平成19年10月11日(木)、南伊勢町役場(南島庁舎)で午後3〜5時までの2時間、開催されている。研究会に先立ち、その日の午後1時からは、稲葉輝喜町長(当時)同行のもと、現地視察も実施されたそうだ。
出席者には、当時の肩書きで、南伊勢町からは稲葉町長ほか、防災安全課長と建設課長補佐が、三重県からは宮崎純則県土整備部総括室長、山田秀樹県土整備部港湾・海岸室副室長ら、さらには、国土交通省の人間も名簿に名前を連ねていた。中部地方整備局から宮本卓二郎港湾空港部長、丸岡初四日市港湾事務所長などの名前も見ることができる。
そもそも、地方整備局は地方支分部局で、全国を8つに分けて、直轄の道路、河川、港湾等の整備・維持管理から建設業や不動産業の許認可に関する業務や指導監督などを所管する。港湾空港部とは、旧運輸省の各港湾建設局の事業を踏襲する部局だ。
だが、そんな細かいことよりも、南伊勢町の関係者は、「立ち上げられた研究会のメンバーに国交省(お上)の人間も入っている」ことで、すっかり舞い上がってしまったという。
「短期間で、ここまで整えてくれた。背後で先生(自民党の大物代議士)の口利きがあったからでしょうが、その時の私たちは、『公共事業』という一計を案じた代議士秘書B氏(仮名)に感謝の念でいっぱいでした。関係者の誰もが、このプロジェクトの成功を疑わなかった」
と、仲介役の男性は振り返る。
大きな岩を砕くのに欠かせない火薬を扱う会社の「株式会社A」(岐阜県大垣市)の社長は、石を売りたいM庭石に「反対の声が上がらないとも限らない。漁民への接待が必要だ」と言われて、約3000万円を渡すように求められたという(Aは渡したと主張し、現在、公判中)。
●秘書が突然“降り”て、話は雲散霧消に
ところが、翌年、事態は急転直下する。
「悪いけど、あの話、僕は降ろさせてもらうよ」
とのB秘書からの電話1本で、話自体が雲散霧消してしまったのだ。以後、数回のやり取りの末、連絡もつかなくなったという。
仲介役を務めた男性やAの社長がその後調べたところ、「B秘書とN建設会社、それにM庭石が新たに組んで、積出港を『名倉港』に変えて、岩ずりを運んだそうなのです。我々は、まんまと梯子をはずされてしまった。経緯については、今もよくわからないのです」
それにしても不思議なのは、なぜ今になって彼らがこんな打ち明け話をしようと考えたのか?
「やはり、公共事業の予算が大幅に増やされるということで、また我々のように踊らされる人が出るのではないかと不安になったからです」
そう説明したが、これは言葉通りには受け止められない。
言い方は悪いが、彼らにも当然“欲”があったはずだ。おいしいビジネスに便乗できれば、ぬれ手に粟と考えていた節も否定できない。