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渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」

埼玉の公立中高、朝日新聞&ベネッセに利益誘導か 検定受験を生徒に強要、県議会で審議へ

文=渡邉哲也/経済評論家

「語彙・読解力検定」という検定があることを、ご存じだろうか。

「“ことばの力”を問う」とうたうこの検定は、朝日新聞社ベネッセコーポレーションが共同で実施している民間の検定試験であり、営利企業による営利目的の資格ビジネスである。

 もちろん民間企業が資格商法を展開すること自体に、なんの問題もない。しかし、「教員などの教育公務員が、学校の生徒にお金を払わせて受験を強制させている」となると、大きな問題が生じてくる。

 この語彙・読解力検定は2011年からスタートしているが、徐々に「学生に受験を強制している、公立の中学校や高校がある」という事実が明らかになってきた。埼玉県のある公立高では、同検定の受験を学習計画に組み込み、生徒に事実上の強要をしていることがわかっている。

 当然ながら、同検定を受けるためには、関連教材の購入や受験料が発生するが、それらの費用は生徒側の負担である。これは、教育公務員による特定の民間企業への利益誘導行為にあたり、大きな社会問題であるといえよう。

 そして、この事実を知った埼玉県議会議員の鈴木正人氏によって、調査が進められている。埼玉県教育委員会は、鈴木氏の調査に対して「生徒の学力向上のためであり、適切」として、非を認めようせず、実施にこだわり続けた。このため、鈴木氏が「類似の検定があるのではないか」と質問したところ、県の教育委員会は類似の検定の一覧を出してきたのであった。

 そこには、類似の検定として、特定非営利活動法人である日本語検定委員会が主催し、文部科学省、日本商工会議所、経団連事業サービス、全国連合小学校長会、全日本中学校長会、全国高等学校長協会、全国高等学校国語教育研究連合会が後援する「日本語検定」も含まれていた。

 単なる民間企業が勝手につくった資格と、特定非営利活動法人主催で文科省を中心にさまざまな公的団体が後援する資格。誰が考えても、前者の語彙・読解力検定にこだわる理由などないはずである。

朝日新聞の購読斡旋にも通じる検定受験

 また、語彙・読解力検定は、文科省が求める教育基本綱領の趣旨にも反する検定である。なぜなら、学習指導要領では、新聞を活用した情報の読み比べを求めており、朝日新聞に出題が偏る検定の受験勉強は、それを阻害するからだ。また、検定受験に有利になるため、必然的に朝日新聞の購読を斡旋しているに等しいともいえる。

渡邉哲也/経済評論家

渡邉哲也/経済評論家

作家・経済評論家。1969年生まれ。
日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務し独立。複数の企業を経営、内外の政治経済のリサーチや分析に定評があり、政策立案の支援、雑誌の企画監修、テレビ出演等幅広く活動しベストセラー多数、専門は国際経済から金融、経済安全保障まで多岐にわたり、100作以上の著作を刊行している。

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