8日、天皇陛下はあくまで「私が個人として、これまでに考えてきたことを話したいと思います」と前置きをなされつつも、以下のように心境を語られ、以前より報じられていた「生前退位」への強いご意向をお示しになられたとも受け取れる発言をなされた。
「従来のように重い務めを果たすことが困難になった場合、どのように身を処していくことが、国にとり、国民にとり、また、私のあとを歩む皇族にとり良いことであるかにつき、考えるようになりました」
「全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています」
「天皇の高齢化に伴う対処の仕方が、国事行為や、その象徴としての行為を限りなく縮小していくことには、無理があろうと思われます」
今回のご表明をめぐっては、すでにさまざまな解釈がなされているが、そこに至るまでの経緯は異例の展開をたどった。全国紙記者が語る。
「生前退位のご意向をめぐる一連の動きは、7月13日のNHKによる第一報が事の発端です。テレビや新聞の皇室報道は、基本的には宮内庁の統制が強く働いているので、宮内庁の意に沿った報道がなされるのが通例です。それゆえ、NHKの報道直後に宮内庁が完全否定するというのは異例の事態でした。結果的に今回の『お気持ち』表明により、かなり以前から天皇陛下と宮内庁の間で議論の遡上に上がっていたことが明らかになり、NHK報道が正しかったことが証明されました」
宮内庁の丸投げ
では、宮内庁の否定からわずか3週間もたたないうちに、一転して天皇陛下がご自身の口で生前退位のご意向をお示しになられるに至った背景は、なんなのだろうか。
「現行憲法は生前退位を認めておらず、実現のためには新たな立法や法改正、そして気の遠くなるほど多くの細かい制度整備が必要となり、ハードルが極めて高いということを宮内庁は百も承知しています。しかし、天皇陛下の強い意向を無視するわけにはいかない宮内庁が、首相官邸との十分なすり合わせができていない時点でNHK報道が出てしまい、さらに想定を超える反響の大きさで、宮内庁としてはまったく対応ができない状態になってしまったのです。いわば暴走気味に官邸へ“丸投げ”した格好となり、今回の『お気持ち』の文面についても、何度も宮内庁と官邸の間でやりとりして作成されました。結果としてかなり具体性の強い文面となりましたが、天皇陛下ご自身の極めて強いご意向とこだわりが反映された結果だといわれています」(同)
では、それほどまでに天皇陛下の強いご意向があるということは、政府としても生前退位に向けて一気に動き出すのであろうか。