就任以来、小池百合子東京都知事は築地市場の豊洲への移転や東京五輪(2020年)といった東京都の暗部にメスを入れ、都民からも絶大な支持を受けている。これらの問題は、ようやく解決の糸口が見えたにすぎず、小池知事には苦難の道が予想される。
これらの問題に隠れがちだが、小池知事肝いりの政策として知られるのが、電柱の地中化――いわゆる無電柱化だ。小池知事は衆議院議員時代から積極的に無電柱化を推進し、東京大学の松原隆一郎教授との共著『無電柱革命』を出版するほど力を入れてきた。
小池都政の看板政策とも目される無電柱化だが、現在、東京都内には75万4000本以上の電柱があるとされている。また、東京都内は無電柱化が進められているものの、全国では現在も電柱は増え続けている。一方、イギリスやフランスでは電線や電柱は地中に埋設することが当たり前になっており、市街地で電柱を見かけることはほとんどない。
そうした先進諸国に倣って、東京都も1986(昭和61)年度より無電柱化に取り組んできた。取り組み開始から30年の歳月を経ても、無電柱化の取り組みはいっこうに進展を見せていない。東京都建設局道路管理部の担当者は、無電柱化の取り組みについて、こう力説する。
「無電柱化を推進する意義は、大きく3つあります。ひとつは、近年になって東京でも想定されている大規模地震への対応策として都市の防災機能を強化することです。2つ目は、歩行者は当然ながらベビーカーや車いすでも移動しやすい空間を確保することです。そして、3つ目が、電柱や電線をなくすことによって都市景観を向上させることです」
長らく取り組んできた東京都の無電柱化は、2014(平成26)年度末時点で、整備済が859キロメートル、地中化率は37パーセントにまで達した。しかし、東京都が整備対象としている道路は、約2328キロメートルもある。とても、無電柱化が進んでいるとはいいがたい状況だ。
無電柱化の最大のネックは、なによりも費用面が挙げられる。地形や工事の取り組み状況によっても変動するので一概に金額を挙げることはできないが、東京都は道路1キロメートルあたり4~5億円の費用がかかると試算している。