想像を絶する費用と時間
また、公道上はスムーズに工事ができても、公道から一軒一軒の家々につなげる電線などは民有地を経由するため、その部分は個々に交渉することになる。
そうしたことから、道路400~500メートルを工事に7年の歳月を要するともいわれる。東京都全体はおろか、23区内を無電柱化するだけでも想像を絶する費用と時間が必要になるのだ。
「東京都は無電柱化を推進していますが、そのうち山手通りの内側はセンター・コアと呼ばれる重点地域とし、センター・コアの地中化率は90パーセントにまで達しました。東京都では無電柱化の進捗スピードをアップさせて、2020年の五輪開幕までにセンター・コアおよび競技会場周辺の都道と交通の要衝でもある環状7号線の無電柱化を目標にしています」(同)
無電柱化を政策の柱に据えた小池知事の誕生で、無電柱化政策は大きくスピードアップするのだろうか。
「政府も電線共同溝の整備等に関する特別措置法を施行するなど、電気事業者や通信事業者の工事費負担が軽減する支援策を打ち出しています。また、政府は2016(平成28)年4月から緊急輸送道路に電柱を新設できないように道路法の一部を改正しています。そうした国の後押しもさることながら、小池知事は通信事業者や電気事業者にケーブルのコンパクト化を働きかけるなど、無電柱化が技術面やコスト面の両面から容易になるように動いています」(同)
前述したように無電柱化1キロメートルあたり4~5億円の工費と試算されているが、そのうちケーブルや管路などの材料費が大半を占めている。つまり、技術革新によってケーブルや管路などの材料費を圧縮できれば、無電柱化の総工費は安価になり、スピードアップが見込める。
各県の知事にも呼びかけ
そして、もうひとつ無電柱化のネックになっているのが区市町村道の存在だ。国道や都道は国や都が工事・管理している。そのため財源も豊富で無電柱化は進めやすい。一方、区市町村道は予算の都合もあって、なかなか無電柱化が進んでいない。都内に残る電柱約75万4000本のうち、区市町村道に残る電柱は約69万5000本もある。