韓国の文在寅政府の不可解な北朝鮮政策に韓国人からも異論が上がり始めている。韓国政府は6日、南北交流推進協議会を開き、今後3年間で約200億ウォン(約18億円)を投入するDMZ(南北軍事境界線の非武装地帯)平和統一文化空間造成事業を議決した。北朝鮮が6月16日、開城の南北共同連絡事務所を爆破したことは記憶に新しく、日本在住の韓国人からも「文政権のやっていることは本当に意味がわからない」と疑問の声が上がっている。
韓国紙も「不適切な決定」と批判
朝鮮日報オンラインは7日、記事『180億ウォン連絡事務所爆破の責任問わず…韓国政府、120億ウォンの対北人道支援を議決』を配信した。同記事で、韓国統一部の李仁栄(イ・インヨン)長官主催の協議会で約11億円規模の支援と、前出のDMZ事業を行うことを決めたという。そのうえで「北朝鮮が開城の南北共同連絡事務所と開城工業団地総合支援センターを爆破してからまだ2カ月も過ぎていないにもかかわらず、今のこの時点から韓国政府として北朝鮮への大規模支援を決めたことについては『不適切な決定』との指摘が相次いでいる。爆破された南北共同連絡事務所には、南北交流協力基金から総額でおよそ700億ウォン(約62億円)が投入された」と報じている。
日本の外務省関係者は話す。
「2017年の9月の核実験、同年11月に行われた弾道ミサイル発射に対し、国連安全保障理事会は北朝鮮に対して決議2375号、決議2397号で輸出入の制限や資産凍結を含めた厳しい経済制裁を課しています。今のところ、北朝鮮は核兵器の放棄を認めず、決議に対して反発したままであり、昨年2月の米朝首脳会談でも進展はありません。国際社会は一致団結して北朝鮮に対して圧力を強めています。
今回の韓国政府の支援は国連機関である世界食糧計画(WFP)を通じて乳幼児や妊婦などに栄養補助食品9000トンを提供するということです。韓国政府は『WFPから再三の要請を受けたから』との見解を示していますが、この支援に関してWFPに対してロビー活動をしていた組織の中に、韓国内の人道支援団体があったこともわかっています」
これまでも「北朝鮮の制裁破りを韓国政府が支援しているのではないか」との疑惑はたびたび報道されてきた。人道支援は大切だが、DMZの事業は腑に落ちない点が多い。前出の記事では事業内容を「南北出入事務所と撤去監視哨所(GP)などを活用して南北が共同で使用できる文化交流空間を造成する」と説明している。少なくとも南北共同連絡事務所が爆破されたタイミングで、最前線であるDMZに似たような施設を建造するというのはどうなのだろう。
「最前線の兵隊にはいい迷惑」
韓国政府の動向に日本在住の韓国人からも疑問の声が聞かれた。徴兵され、南北軍事境界線で勤務したことのある30代の会社員男性は次のように語る。
「北朝鮮は南北共同連絡事務所を爆破したことについて、一回も謝罪していませんし、歩み寄りの姿勢も見せてきません。その中で今回の事業は意味不明です。
金正日、金正恩が軍事的なパフォーマンスをするたびにDMZ沿いの軍事境界線は耐え難い緊張感に包まれます。実際に友人の部隊は銃撃されたり、砲撃されたりしていました。そして、今は韓国政府もパフォーマンスが好きです。それにつきあわせられる前線の兵隊はたまったものではありません。国民の税金を投じても、またすぐ爆破されるのではないでしょうか」
在日3世の経営者男性も次のようにぼやく。
「日本には『賽の河原の石積み』というエピソードがありますよね。一生懸命、石を積んでも鬼にすぐ崩される。そうなることがわかっていて、文在寅大統領はまたよくわからない融和政策を進めようとしています。日韓関係が徴用工訴訟の影響で崩壊しそうな時期に、なぜあえて北朝鮮にすり寄るのか。日本にいる同胞だけではなく、韓国国内の経済関係者もみんな頭を抱えていると思いますよ」
韓国政府の北朝鮮政策には今後も注視する必要があるだろう。
(文=編集部)