“イソジン吉村”という通り名が世間に定着しつつある、大阪府の吉村洋文知事(45)。新型コロナウイルス感染症の予防効果に関する記者会見で物議を醸しているが、ここで驚きの事実が明らかになった。
吉村知事は8月4日の会見で、「大阪はびきの医療センター」の臨床研究により、「『ポビドンヨード』で新型コロナウイルス感染症の治療効果が期待できることを確認した」と発表した。一方で、研究を主導した同センターだが、「大阪府民でも聞いたことがない」という声が多く上がっていた。なんと、このセンターが設立されたのは会見の3日前の8月1日だったというのだ。大阪府議の野々上愛氏(高槻市・島本町、立憲民主党)が12日、自身の公式ブログで明らかにした。
情報公開のハードルの高い独立行政法人として8月1日に設立
野々上氏は12日に公開したブログ『大阪はびきの医療センターによる新型コロナ対策のためのポビドンヨード研究についてのヒアリングメモ』で以下のように同センターに関して述べている。
「今回、研究を行ったのは、地方独立行政法人大阪はびきの医療センター。旧府立病院が独法化したものである。大阪府としては出資法人として一定のかかわりを持つものであるが、情報公開という観点からはハードルがぐっとあがる。
研究発表を行った研究者が、また研究所がこれまでどのような研究を積み重ねてきたか、調べてみようと思ったところ、当該研究者がセンター長をつとめるという次世代創薬創生センターのHPは『準備中』との表示があるのみ。センター設置が最近であることは想像できたが、果たしていつ設置されたのか、議会図書館で確認した今年4月1日の組織機構図には、次世代創薬創生センターの記載はなかった。改めて府担当課を通じて、組織規程を提供いただいたところ、今年7/29の規約改正でセンターが位置付けられ、正式には8/1の設置と言うことが判明した。
一方、研究倫理委員会では、5月、7月と2度にわたり次世代創薬創生センター名で申請がなされている。センター準備中、等の表記があれば誤解がなかったのではと感じるが、条件付き認可の内容等、検証の必要があろう。
いずれにせよ独法化により、府民に対する情報公開のハードルが上がっていると言えよう」
会見で今回の研究成果は、「5月末に企画し、6〜7月中旬にかけて大阪府の宿泊療養施設に滞在する陽性者41人分の検査を行い、7月末に研究結果を取りまとめた」と説明されていた。
研究の実施主体が前身の組織で、調査そのものが適切に行われていれば問題はないのかもしれないが、会見とセンター設立がほぼ同時というのはどういうことなのか。また野々上氏が指摘するように、自治体所属の機関と違い、独立行政法人は容易に情報開示請求に応じない。
吉村府知事の唐突なポビドンヨードに関する発表への疑問は日々深まるばかりだ。今後、府議会での議論を経て、疑惑の解明は果たされるのだろうか。
(文=編集部)