来秋の茨城県知事選が永田町関係者や霞ヶ関関係者、さらには産業界からも注目を受けつつある。というのも「ニコニコ動画」で知られるドワンゴの現職取締役が、多選批判の強い茨城県知事選出馬への動きを加速させているからだ。
茨城県知事選が注目を受けるのには、いくつか理由がある。まず橋本昌現知事は現在71歳で、全国最多選6期目。以前から多選批判があっても圧倒的支持で勝ち続けている。
「過去の最多当選知事は8回が最高で、これまでたった2人。それもまだ多選批判がさほどではない時代の話です。今は現職で最多当選(6期目)は橋本知事と石川県の谷本正憲知事(71)で、2人ともひょっとすると8選までいくのではとも囁かれています」(地元政界関係者)
実は橋本知事が8年前の5期目に当たる2009年当時、自民党茨城県連が多選弊害を理由に引きずりおろそうとしたことがある。そして白羽の矢がたったのは、地元の土浦一高から東京大学を経て国交省入省し、その頂点に立った小幡政人元国交省事務次官。そのエリート歴からしても絶対勝てると信じた自民党関係者は多かった。
ところが蓋を開けると結果は予想に反し、ダブルスコアで小幡氏が大敗した。
「橋本氏が多選批判にもかかわらず圧勝したのは、長年の知事在任で抜群の知名度と、自民党茨城県連のなかにも公然と造反者が出て橋本支持に回ったため。その後の選挙でも
自民党茨城県連は対抗馬も立てられず橋本氏が6選を果たしたのです」(県政関係筋)
そんな橋本氏は来秋の都知事選で、7選目をもうかがう勢いだという。
「橋本氏は12月21日の定例会見で、7選に挑むかどうか記者から問われても、『まだ9カ月もあるので』と明言を避け、さらに『多選でもやれ、という意見もある』と煙にまいた。こうした姿勢とこれまでの手法を考えると、出馬の可能性が極めて高いのです」(県政担当記者)
永田町でも地元でも騒動
ところが、ここにきてドワンゴ役員の大井川和彦氏(52)を、自民党茨城県連が推薦候補として擁立することを役員会で正式に決めた。
ドワンゴといえば、ニコニコ動画のほかにゲームなどIT関連では日本でもトップランナーだ。さらにKADOKAWAと共同で沖縄にプログラミングが学べるN高等学校を立ち上げ、教育でも新たなジャンルを切り開こうとしている。
そんなドワンゴ取締役の大井川氏の出馬の方向に、永田町も地元もちょっとした騒動になっている。
「出馬検討はドワンゴの事業と直接リンクするものでなく、大井川氏の個人的意思のようです。東大法学部卒で経産官僚出身の彼が知事選に出馬検討するのは、茨城県日立市出身で水戸一高卒という地元意識からです。大井川氏は経産省を退職してマイクロソフト(現日本マイクロソフト)などIT関連企業で働いていたところをドワンゴに引き抜かれた。そんななか、多選批判する自民党関係者に声をかけられたということでしょう」(県政関係筋)