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AVの雄・SOD、大量人材流出で「壊れかけ」危機…35歳の監督出身社長、大改革断行

構成=ソマリキヨシロウ/清談社
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AVの雄・SOD、大量人材流出で「壊れかけ」危機…35歳の監督出身社長、大改革断行の画像1「Thinkstock」より

 今年6月、アダルトビデオ業界の雄であるソフト・オン・デマンド(SOD)の社長に35歳の野本義明氏(野本ダイトリ)が就任した。1995年に同社が設立された当時、AV業界は大手メーカーによる寡占状態にあった。そこに、企画面や流通面から風穴を開け、急成長を遂げたのがSODである。

 設立から現在に至るまで、SODは多くのグループメーカーとともにAVビジネスを手広く展開してきたが、今回の人事によって新たなフェイズに突入することになったといえるだろう。突然の社長就任劇と今後のSODの方向性などについて、野本氏に話を聞いた。

「お前は大バカだから、社長やってみろ」

――野本さんは、SODクリエイトの所属だったんですよね。

野本ダイトリ氏(以下、野本) 僕はずっとクリエイトです。学生の頃からAV監督になりたくて、クリエイトに入社してADになり、監督として独り立ちして……という流れですね。監督として作品をつくりながら、制作も仕切るようになって、肩書きとしては「SODクリエイトの役員」でした。

――そこからSODの社長になるというのは異例です。

野本 3年前に創業者の高橋がなりが戻ってきて、「なんてつまらない会社になっているんだ」と言うのです。「SODから理念がなくなってしまい、ただAVをつくって売るだけの会社になっている」と。

 そこで、いろいろな改革を始めたのですが、その結果、営業部は全員いなくなり、役員や部長をはじめとする幹部も上から30人くらい辞めてしまった。大型の台風が来たみたいに、みんな吹っ飛ばされてしまったのです。まわりを見わたすと社内に誰もいなくなり、社長をやる人もいない。そんなとき、高橋に「お前は大バカ野郎だから、社長やってみろ」と言われまして。二つ返事でOKしましたよ。「はい! やります!」と(笑)。

――電撃的な就任劇ですね。

野本 そもそも、僕の監督デビュー作を面白がってくれたのが高橋でした。それからロケに呼んでもらったり、いろいろ声をかけてもらったりしていたんです。高橋がどういう考えで作品をつくっているのかを近くで見て、学ばせてもらいました。高橋はやっぱりカリスマなので、僕はどうやってもかなわない。そう思っていたら、高橋が「お前はまわりに人を集めて、それをまとめあげて戦えば、俺を超えられるかもしれない」と言うんです。「バカは大きく成長できないけど、お前は大バカだから化ける可能性がある」と。

――社長になる前は、ずっとAV監督としてやっていこうと思っていたんですか?

野本 僕はきちんと人生設計をするタイプで、「何歳までにこれを学び、5年目にはこれくらいの監督になっていなければ」と逆算してイメージしていました。AV業界は40歳で終わりにして、その後はカレー店でも開こうかなと思っていたんです。だから、突然社長になることになって、自分でも戸惑っている部分がありますね。

SODの投資とは、若手に失敗させること

――具体的に、SODの社長として、どんなことをやっていこうと考えていますか?

野本 まず、一番はSODのグループメーカーをもう一度しっかりまとめて、力を合わせてやっていくということです。やっぱりモノづくりをしているクリエイターを応援するための会社なので、その原点に立ち返り、グループメーカーの制作者たちの意見を聞いて、経営や戦略に盛り込んでいきたい。

 それと、作品を売っていくための体制を一から立て直しています。各部署から人を集めたり、中途採用を実施したりして、営業部隊や戦略をつくっているところです。あとは新規事業ですね。

――新規事業とは、どういうものですか?

野本 「SILK LABO」や「GIRL’S CH」といった女性向けのアダルト事業や風俗サイト「kaku-butsu」など、いろいろあります。ただ、新しいこともやっていますが、まずは現状の把握と体制の立て直しですね。そのために、人の意見を聞き、「5年後、10年後にSODをどういうかたちにしていくのか」という未来図を描く。現在は、それを組み立てている状態です。

――「SODの理念」とは、どういうものなんですか?

野本 やっぱりSODはモノづくりの会社で、そこが出発点。他社がやらないような面白い企画を考え、ユーザーさんに提供することです。ここ数年、SODは商業主義というか、すべてを数字のもとに動かしていくという方向に走りすぎていました。

 でも、モノづくりを大切にするなら、目先の利益だけを追い求めず、投資するべきところには投資しなければならない。そのSODの原点に立ち戻ったときに、監督などのクリエイターがどれだけ揃っているかが勝負。監督が育った分だけSODも大きくなるので、今は若手監督にたくさんつくらせて、ボツ作品を量産していますよ。

――SODにおける「投資」とは、若手監督につくらせることなんですね。

野本 若い頃は、一回失敗させないとわからないと思うんです。僕もそうでしたが、クリエイターはみんな頑固なので言うことを聞きません。「どうせボツになるんだろうな」「売れないんだろうな」と思いながらも、一回自分でやらせて、ロケに行かせて、ボツにして、反省させるっていう繰り返しです。若手の教育が、一番力を入れているところですね。

「元芸能人のデビュー作」は誰でも撮れる

――しかし、AV業界はやっぱり女優さんが中心の世界。人気と知名度がある女優さんを起用することに注力されているメーカーさんも多いですよね。

野本 僕も撮っていたからわかるのですが、AVというのは、どれだけいい女優さんが来ても、撮る人によって面白い作品にもつまらない作品にもなるんです。たとえば、新人女優さんに感情移入して「この子のデビュー作を自分が全責任を負ってユーザーに届けるんだ」と思って撮る人と、単なる仕事モードで撮る人では作品の出来がまったく違う。情熱を持って撮れば、その女優さんの良さを監督の力で何倍にもできるわけです。

 もちろん、いい女優さんを呼べるように努力もしていますが、それよりもSODでしか撮れないような作品をつくり、展開の仕方まで含めて考えることができるディレクターが必要。そういう制作者が揃う会社にしていきたいです。

――では、いわゆる「元アイドル」の女優さんなどはあまり狙わない?

野本 言い方はよくありませんが、「芸能人のAVデビュー作」というだけなら誰でも撮れる。そこで、監督の個性をちゃんと表現し、同時に女優さんの良さを引き出して届けられるのがSODらしいということだと思うんです。普通の女の子だったとしても、キャラの引き出し方によっては元芸能人よりも人気が出ます。そういう前例を何回も見てきたので。

――ありがとうございました。

 後編では、AV業界の未来やSODの今後の展望などについて、さらに野本氏の話をお伝えする。
(構成=ソマリキヨシロウ/清談社)

●野本ダイトリ(のもと・だいとり)
1981年1月7日生まれ。埼玉県出身。2004年、SODクリエイトに新卒入社。2016年6月より現職

野本ダイトリ SOD (@nomotoyoshiaki) | Twitter

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清談社

せいだんしゃ/紙媒体、WEBメディアの企画、編集、原稿執筆などを手がける編集プロダクション。特徴はオフィスに猫が4匹いること。
株式会社清談社

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