トランプ、恫喝ツイッター恐怖政治の代償…米中軍事衝突の懸念、企業がご機嫌取り合戦
ドナルド・トランプ次期米大統領は11日午後(日本時間12日未明)、ニューヨークのトランプタワーで記者会見を行い、フォードやクライスラーといった2大米自動車メーカーがメキシコでの新工場の建設計画を撤回し、米国内の工場増強を発表したことに謝意を表明。そのうえで、「私は最も多くの雇用を生み出す大統領になる」と強調するなど、トランプ新政権の政策の要は「米国第一(アメリカファースト)」であり、その中心は雇用創出などアメリカ経済の再生であることを改めて印象付けた。その意味では、これまでの発言と同じで新味はない。
しかし、次期大統領が当選後、2カ月間も会見を開かず、その間、ツイッターで300回もメッセージを発信し、“恫喝”まがいに企業のメキシコでの新工場建設を批判するなどして、米国の2大自動車メーカーの計画を撤回させたことは、良くいえばトランプ氏がビジネスマンらしく交渉術に長けていることを示している。
悪くいうと、米大統領という強大な権力をテコにして、相手を恐怖に陥れて屈服させるという権威主義的なやり方は批判されてしかるべきで、恫喝によって相手が従うのは最初だけであり、その後は大きな反発を生むことを忘れてはならないだろう。
企業が相次ぎ「貢献」を約束
トランプ氏のビジネス交渉術にしてやられたのは、米企業ばかりでなく、日本や中国の企業もだろう。米国経済再生や雇用の創出を政策の要に据えるトランプ氏のご機嫌を取るように、ソフトバンクグループの孫正義社長が昨年12月6日、トランプタワーでトランプ氏と会談し、総額500億ドル(5兆7500億円)を米国でIT(情報技術)分野を中心にした新興企業に投資し、5万人の雇用を生み出すことを約束した。
また、トランプ氏は1月5日、ツイッターでトヨタ自動車のメキシコ工場新設撤回を求めると、同社は撤回要請には応じないものの、豊田章男社長が訪米中の9日、米国で持続的な投資を続け、今後5年間の総額は計100億ドル(約1兆1500億円)になる見通しを表明した。
さらに豊田社長は次期米副大統領に就任するペンス氏と、10日(現地時間)に会談したと伝えられる。ペンス氏はトヨタの生産工場があるインディアナ州の知事を務めており、雇用や投資などでの米国経済への貢献について話し合ったもようだ。