安倍晋三首相の後継を決める自民党総裁選が14日に行われ、菅義偉官房長官が新総裁に選出された。16日に召集される臨時国会で新首相に選ばれる見通し。
菅氏は2012年12月26日から7年8カ月、安倍内閣において官房長官を務めてきた。総裁選後、安倍首相が「7年8カ月、官房長官として国のために、そして人のためにもくもくと汗を流してきた菅さんの姿を私はずっと見てきた。この人なら間違いない」と称賛。さらに「令和時代にもっともふさわしい自民党新総裁ではないか」と新総裁誕生を祝福した。
新首相が菅氏になることが事実上、確定したことで、韓国もざわついている。
菅氏は新総裁選出後、「安倍総理が進めてきた取り組みを継承し、進めていかなければならない。私にはその使命があると認識している」と語っているように、内政のみならず外交においても基本的に安倍内閣の路線を踏襲するとみられているからだ。
第2次安倍内閣発足後、日本政府は韓国との関係をドライに割り切って付き合ってきた。幾度となく約束を反故にする韓国に対し、譲歩することなく距離を置き、韓国側が約束を遂行しない限り歩み寄らない、という姿勢を貫いてきた。そのため、韓国では安倍首相は韓国に敵対的な人物としてとらえられている。韓国人のなかには、「戦後、日韓関係をもっとも悪化させた」などと誹謗する向きも多い。
菅氏は、その安倍首相の路線を踏襲することを明言しているばかりか、韓国内で抗日闘争の英雄とされる「義士」と称えられる安重根のことを「我が国の初代首相を殺害、死刑判決を受けたテロリスト」と酷評したことから、韓国では大きな反発を呼んでいるのだ。
安重根は、日本の初代首相で韓国統監府の初代統監でもある伊藤博文を狙撃し、死刑に処せられた人物だが、韓国では“反日のシンボル”となっている。ちなみに、先の菅氏の安重根評は、のちに政府の公式見解として閣議決定されている。
「2013年に韓国・朴槿恵前大統領が中国に依頼して安重根の石碑を設置しようとした際、菅氏は『安重根に関しては犯罪者であるということを韓国政府にこれまでも伝えてきた』と抗議し、石碑の建立は『日韓関係にとって役に立たない』と述べて釘を刺しました。しかし翌14年、抗議を無視して中国に安重根記念館が開館すると、『(安重根は)我が国の初代首相を殺害、死刑判決を受けたテロリスト』と発言して批判。この発言を韓国の各メディアが大きく取り上げ、韓国内で猛反発を呼びました」(韓国紙記者)
このような流れがあったことから、菅氏の首相就任は日韓関係を改善する方向に進まないとみる向きが多い。韓国のネット上には、次のような声が相次いでいる。
「菅は安重根をテロリストと言った。安倍よりも日韓関係を悪くする」
「菅は第二の安倍どころか、安倍よりも悪質だ」
一部には菅首相誕生を歓迎する論調も
一方で、菅氏の一連の発言はあくまでも日本政府の報道官である官房長官としてのものであり、実際は各方面のバランスを重視する温和な人物であると紹介し、菅首相誕生を歓迎する論調も一部にはある。
「菅氏は安倍首相が靖国神社を参拝する際に、周辺国の反発を考慮して引き止めたり、日韓関係が悪化して一部の政治家が韓国を侮蔑する発言をした際には、冷静な対応をするようにと苦言を呈するなど、大局的な視点を重視しているように見えます。事実、そのように期待をもって菅氏を紹介しているメディアもあります」(同)
菅氏は総務大臣や郵政民営化担当大臣など、要職を歴任してきたため、内政においては定評があるが、外交に関しては未知数との声が多い。
新型コロナウイルスという未知のウイルスが世界中で猛威を振るい、内政でも外交でも困難な舵取りを迫られるなかで、菅新内閣は発足する。国内外からその手腕が注目されることになるのは間違いない。