(画像は東京都庁/「Wikipedia」より)
広島市が3月末に土地開発公社(負債231億円)を解散させたのをはじめ、横浜市も今年度、土地開発公社の解散に踏み切る。だが、これとて氷山の一角にすぎない。2013年度は全国規模で地方公社と第三セクターの処理ラッシュが確実視されている。
背景には、総務省の強烈な指導がある。同省は採算上、問題がある地方公社や第三セクターについて、09年度から5年間の期限を切って、廃止などの抜本処理を集中的に行うよう地方自治体に求めている。決算上は黒字であっても自治体からの補助金を除くと赤字になる場合や、資産をすべて売却しても負債を返済し切れない実質的な債務超過のケースなどは「採算性がない」と判断され、民間への売却や廃止などの処理策を検討しなければならない。13年度はその最終年度にあたる。
同時に、総務省は処理を促進するため、改正地方財政法(09年3月成立)で特例的に5年間、第三セクターや地方公社の借金肩代わり費用などを賄う地方債「第三セクター等改革推進債」(三セク債)の発行を認めている。償還期間が最長30年までと長く、地方自治体にとって肩代わりする債務の返済を長期にわたって平準化することができるメリットがある。その起債期限も13年度まで。すでに三セク債の発行は、11年度が922億円、12年度が1824億円と急増しており、今年度は4000億円程度まで増えると予想されている。地方公社や第三セクター処理が加速することは必至だ。
そもそもバブル期に雨後のタケノコのように設立された「第三セクター」は、人口減少と高齢化が急速に進み、雇用機会が減少する地方経済にとって、まさに打ち出の小槌のような存在だった。しかし、バブル経済に浮かれた安直で楽観的な事業計画はほどなく破綻し、バブル崩壊後は抜本処理が先送りされ、実質的に塩漬けになったままの地方公社や第三セクターが大半を占める。
その多くは今なお、赤字を垂れ流し続けている。総務省の調査では地方3公社、第三セクター7041法人のうち、2845法人が赤字だが、地方自治体も地域金融機関も抜本的な処理に二の足を踏む。地方公社や第三セクターの債務について自治体は損失補填契約や債務保証を行っており、財政に余裕のない地方自治体にとって地方公社や第三セクターの処理は、そのまま地方自治体の破綻に直結しかねないためだ。地方公社や第三セクターが抱える負債額は、もはや地方自治体が単独で処理しうる限界を超えた水準に達している。
●巨額交付金の責任追及逃れ
さらに、総務省の通達で、処理を検討する際には、経営悪化の原因とその責任の所在を議会や住民に明らかにしなければならないことも対応を難しくしている。そもそも地方自治体と地元財界、そして地元金融機関の3者がもたれ合う形で生まれた第三セクターや地方公社では、責任の所在があいまいなまま、誰も責任をとろうとはしない。しかも、過半の職員が地方自治体からの出向者が占め、天下りも含め6割強の職員が地方自治体からの人材で占められている。まさに自治体の「天領」のようなもので、「自らの首を絞めるような抜本処理は先送りされがち」(地方自治体職員)と言っていい。
しかも、こうした人的繋がりは、地方公共団体からの巨額な交付金とセットになっている。第三セクターと地方3公社にメスを入れることは、こうした巨額な交付金負担を軽減することになるが、それは同時に、これまで投下してきた巨額な交付金の責任が問われ、地方自治体職員の有力な天下り先を失うことを意味する。また、交付金に絡む利権に預かっていた関係業界とのしがらみを解消することは容易なことではない。
いずれにしても、地方経済が疲弊し、自治体の財政がひっ迫を余儀なくなれる中、第三セクターと地方3公社の処理は待ったなしである。「第三セクター改革推進債」を発行して、解散というソフトランディングを図るか、民事再生などの法的処理に委ねるのか、残された時間は少ない。
(文=森岡英樹/金融ジャーナリスト)