緊迫化する北朝鮮情勢。5月14日にも北朝鮮が弾道ミサイル発射を強行し、国際連合の安全保障理事会で緊急会合が開かれる事態となった。そんななか、長野県軽井沢町が北朝鮮のミサイル攻撃に備えて町職員分の防毒マスクや化学防護服の購入を計画したことが、物議を醸している。
筆者の取材に対して、軽井沢町は「実は、当初は6月の町議会で補正予算160万円を計上する案がありましたが、購入するのは簡易式防護服に変更、予算も10万円にしました」と回答した。
この計画は「過剰反応だ」「安全のためなら、このくらいは必要」と軽井沢町を二分する議論に発展したが、「平和を担保するためには、何を行うべきか」という問題に一石を投じたともいえる。渦中の軽井沢町に話を聞いた(回答は消防課と総合政策課から)。
米軍基地も自衛隊施設もない軽井沢町の危機管理
――まず、防毒マスクや化学防護服の購入を計画した経緯を教えてください。
軽井沢町 5月1日に「北朝鮮のミサイル攻撃に対する日本の平和を守るための最大努力を求める要望書」を藤巻進町長と市村守町議会議長の連名で、安倍晋三首相、岸田文雄外務大臣、稲田朋美防衛大臣にそれぞれ送付いたしました。
これは、安倍首相が4月13日の参議院外交防衛委員会で「(北朝鮮は)サリンを弾頭につけて着弾させる能力を、すでに保有している可能性がある」と指摘されたことを受けたものです。北朝鮮は、これまでも日本の排他的経済水域にミサイルを落下させています。
そのなかで、軽井沢町として何ができるかを検討し、防毒マスクや化学防護服の購入計画を要望書のなかに入れました。公開された要望書の内容がマスメディアで報道され、一般の方々にも広く周知されました。藤巻町長は5月1日の町議会全員協議会で「ミサイル攻撃が現実のものとなりつつあるなか、何をしなければいけないか考えた」と説明しました。
当初の計画では補正予算を組んで160万円を計上する予定でしたが、議会や町民の賛否両論を受けて、簡易式・使い捨て式の防護服が1人当たり約3000円でまかなえるということで、その方向で進んでいます。軽井沢町の職員は30人です。そこで、一般予算から約10万円を計上することで、6月の議会にかけることなく購入する計画に変更しました。
――町民や町議会からは、賛否両論があったのですね。
軽井沢町 ありました。賛成意見としては「やれることはやったほうがいい」という前向きなもので、反対意見としては「そこまでやる必要があるのか」というものです。賛否があって当然だと思います。
藤巻町長のお考えとしては、「軽井沢町のみならず、日本の平和はこれまでのように担保できない可能性がある」ということで、町民に対して平和のあり方について啓発活動を行い、平和についての議論に一石を投じたものだと、行政の側としては理解しています。
――軽井沢町に米軍や自衛隊の関連施設はありますか。
軽井沢町 ありません。