戸籍謄本を公開した理由
12日に蓮舫氏は戸籍謄本を公開する意向だと報じられたが、翌13日の記者会見では、戸籍謄本の公開はせず、戸籍そのものではなく台湾の国籍を有していないということがわかる資料を公開する方向であると表明した。本人は「そもそも戸籍謄本を公開するなどとは言っていない」と釈明したが、実質的には前言の撤回、発言の修正である。
蓮舫氏お得意の発言の二転三転である。筆者は拙稿『民進党、代表選を経てブレて、曲げて、崩れる?』において、民主党代表選の際にも蓮舫氏の発言が二転三転していたことを踏まえ、そのような者が野党第1党の代表たり得るのか、仮に民進党が政権に就いたとして、一国の総理たり得るのかと指摘したが、これは同氏の発言の軽さに対する民進党関係者からの懸念の声を踏まえたものであった。
今回も同様の批判の声が聞こえているが、大きく分けて2つある。
まず、なぜ前言を事実上撤回したのかという声。蓮舫代表の二重国籍問題が民進党に支持が集まらない大きな要因であると考えている勢力からの懸念だ。
もうひとつは、戸籍謄本の全体の公開ではないとしても、なぜ一部でも公開してしまったのかという声。これは、先にも取り上げた、世論の状況や悪影響の可能性を踏まえて蓮舫氏の二重国籍問題を、党としてはこれ以上問題視する必要はないと考えている勢力からの懸念だ。
要するに党内は割れているが、どうも前者、つまり公開に積極的な勢力のほうが優勢だったようで、結局18日に戸籍謄本の一部などを公開した。つまるところ、それをもって都議選の総括に代えたいということなのだろうが、少なくとも二重国籍問題と都議選の総括は別問題であり、二重国籍問題の幕引きを図ったところで民進党の党勢の回復にはつながらないし、都議選の敗因という腫れ物には触れずにお蔵入りというのと同じだ。
これだから民進党は国民の心をつかめないのだが、それにすら気づかないわけで、民進党の先は長くないかもしれない。
(文=室伏謙一/政策コンサルタント、室伏政策研究室代表)