リニア中央新幹線工事をめぐる談合疑惑で東京地検特捜部の捜査を受けている大成建設は2日、強引な捜査が行われたとして東京地検に抗議文を出すという異例の行動に出た。抗議文で大成の弁護士は、次のように捜査の問題点を指摘している。
・検察官が、大成の委託を受けた弁護士や社内弁護士のPCを押収したり、社員に聴取した弁護用の記録文書を押収した。
・検察官が役職員を社長室に呼び出し、「社長の前でも嘘をつくのか!」「ふざけるな!」などと威圧的な態度を取り、検察に有利な証言を強要しようとした。
報道によれば、抗議文が送付された2日、その翌日の3日も特捜部は大成へ家宅捜索を行い、別の日には中堅社員の個人宅にまで家宅捜索が入ったという。
検察特捜部による強引な捜査といえば、2010年に発覚して元特捜部長や元主任検事に有罪判決が下った大阪地検特捜部の証拠改竄事件が記憶に新しいが、もし今回の大成側の抗議内容が事実であれば、何が問題なのか。弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士の山岸純氏に解説してもらった。
憲法問題にまで発展の可能性も
まず、「検察」という組織は、通常であれば、「警察」がまとめてきた捜査資料一式をもって起訴するかどうかを判断するのがメインの業務なので(もちろん、その後の刑事訴訟における公判業務もあります)、捜査をする、ということ自体がそんなに多くあるものではありません。もっとも、「特別捜査部」というくらいですから、検察も独自の捜査を行うことができるわけです。
しかし、常日頃、被疑者に限らず事件の関係者などを広く多く取り調べたり、捜索したりしている警察のほうが、捜査に関しては手練手管(てれんてくだ)でしょうし、専門といえるでしょう。
ところで、検察は後日の刑事訴訟における公判を維持するため(有罪を勝ち取るため)、「検察のストーリー」というものを意識します。この「検察のストーリー」に沿って捜査が行われるわけですが、警察は広い視野で捜査する人手も設備を持っていますので、ダイレクトに捜査を進めるのではなく、ゆっくりと“回りから”攻めることができるわけです。