「2018 FIFAワールドカップ(W杯) ロシア大会」で西野朗監督率いるサッカー日本代表チームが、“赤い悪魔”と呼ばれる強豪ベルギーを最後まで苦しめてポーランド戦での汚名を返上したものの、結果、ベスト8に進めなかったことは、FIFA(国際サッカー連盟)にとっては最良の結果だったであろう。
筆者はフランス在住だが、顰蹙をかったポーランド戦での最後10分間の無気力プレーは、海外では相当不評であった。もしベルギーにボロ負けしたら「それ見たことか、やはり姑息な方法で勝ち上がった弱いチームだ」と評されたであろうし、勝っても「フェアプレイをしたとは到底言えないチームが勝ち上がるのは、いかがなものか」という議論になったであろう。
また、日本ファンにとっては、ベルギー戦ではロスタイムでも攻めに徹し最後までベスト8の夢を見させてくれた。しかも「最後は相手の劇的なカウンターで華々しく散った」というのは日本人の好む美学でもあり、「よくやった」と好意的に受けとめられたと思う。
筆者は小学生の時に“日本のサッカーの父”といわれるデットマール・クラマー氏から教えを受けたこともあり、サッカーをこよなく愛しているが、日本代表はよくやったと思う。選手が高齢であるとの批判もあったが、先発はほぼヨーロッパのクラブチームに所属する海外組(全試合先発のJリーガーは昌子源選手のみ)であり、選手の実力は高くなってきている。
確かに、一次リーグの成績は1勝1敗1引き分けと通過チームの最低ラインであったし、コロンビア戦は相手のおかげで始めから1点リードをもらい、かつ90分のほとんどを11対10という人数で戦えたので、これは勝ってもラッキーといえよう。しかし、2戦目のセネガル戦で2度のビハインドをはねのけて同点で終えたのは、かつての日本にはない勝負強さが発揮された結果だ。余談だが、今回はベスト16からベスト8までの戦いでは、すべて一次リーグのポイント(得失点差も含む)の高いチームが勝ちあがっている。ベスト8から決勝までをみても、例外は優勝したフランスだけである。
ポーランド戦でかった顰蹙
しかし、ベルギー戦で残念だったのは、フランス対ウルグアイ(2-0)、ベルギー対ブラジル(2-1)の準々決勝を見るにつけ、なぜ2-0を前提とする試合運びができなかったかである。原口元気の右サイドと乾貴士のミドルシュートはとても素晴らしいシュートである。サッカーは他のスポーツと比べて意外なことが起こることが多い。やはり、この2人のシュートをもたらしたのは、チームとしてポーランド戦の汚名を濯ぐための“攻めの意識”が非常に強かったからではないか。火事場の馬鹿力ともいえよう。これが実力ならば、日本は世界ランキング61位ではないはずである。