7月18日の東京株式市場。ファッション通販サイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営するスタートトゥデイの株価は一時、4%(200円)高の4875円をつけ、株式分割を考慮すると実質的な上場来高値を更新した。時価総額は初めて1兆5000億円を超えた。
小売業の時価総額では、ファーストリテイリング、セブン&アイ・ホールディングス、ニトリホールディングス、イオンに次ぐ第5位に躍進した。
前日、社長の前澤友作氏が自身のツイッターに「プロ野球の球団を持ちたい」と書き込んだことが買い材料になった。モルガン・スタンレー・MUFG証券は17日付レポートで、「多少の赤字となってもブランディングとして極めて効率が良い」と指摘。「ZOZO球団」が現実のものになれば、通販サイトの認知度が向上。ブランド価値が高まるとの期待が集まった。
実際に株式市場では、プロ野球参入は買い材料となっている。2005年から球団を経営するソフトバンクと楽天は、04年に年間でそれぞれ52.1%、140%の株価上昇(ソフトバンクは一時75%高)。12年からの参入したディー・エヌ・エーも、11年は21.7%高(一時39.4%高)だった。これら3銘柄は、すべて04年以降に日経平均に新規採用されている。
横浜DeNAベイスターズを持つディー・エヌ・エーのスポーツ事業は、地域密着型の営業で観客動員数が増加。17年3月期に営業損益段階で黒字に転換、18年同期は66%の増益となった。
大和証券は17日付リポートで、秋の日経平均の新規採用銘柄候補のひとつにスタートトゥデイを挙げた。株価は思惑先行の様相をみせている。
ZOZO球団の真の狙い
スタートトゥデイは、10月1日付で社名を「ZOZO(ゾゾ)」に変更する。昨年立ち上げたプライベートブランド(PB)「ZOZO」の海外展開に備え、認知度を高める狙いがある。
グローバル展開するため、採寸用ボディスーツ「ゾゾスーツ」やジーンズ、Tシャツを無料で届ける。この“ゼロ円”作戦は、ソフトバンクグループがもっとも得意とするところだ。
01年、ソフトバンクが非対称デジタル加入者線(ADSL)サービス「ヤフーBB」を始めた際、モデムを無料でばらまいた。駅前で「パラソル部隊」と呼ばれた社員らが「今なら無料」と通行人に呼びかけた。ゼロ円作戦が効を奏し、あっという間にソフトバンクがシェアを奪った。
ゼロ円で参入するのが、“孫氏の商法”の極意といえる。前澤氏は、IT業界の大先輩である孫正義氏に倣って海外を目指す。