法人税率10%、首都機能移転
――今後、日本が生き残っていくためには何が必要ですか。
中原 大企業がもっと地方に出て行くことが大切だと思います。そのためには法人税減税もいいでしょう。法人税率は10%でもいいと思います。しかし、社会の公器としての役割を何も果たしていないのに、「減税だけはしましょう」というのはおかしな話です。
――「関東大震災の再来がある」ともいわれていますが、そうした震災は日本が変わるために吉と出るのか、はたまた凶となるのか。
中原 東京で大震災が起こった場合、そのダメージは計り知れません。影響は相当大きいと思います。
――しかし、一方では、それまで固定化されていた組織や既得権益が崩壊して大きく変化するかもしれません。それは、その後の日本の発展に寄与するのでは。
中原 そんな大震災があれば、企業が地方に移転する前に国家が破綻しています。財政的に無理だと思います。だからこそ、まずは地盤のしっかりしたところに首都機能を分散しておくべきだと思います。
――移民の受け入れに関しては、いかがですか。
中原 この国が、そのアレルギーに耐えられるかどうかです。
――インバウンド(訪日外国人観光客)の増加によって、東京をはじめ地方にもかなりの数の外国人観光客が足を運ぶようになりました。日本人のアレルギーもかなり緩和されているのでは。
中原 あとは、移民をどのような基準で受け入れるかということだと思います。すでに地方のコンビニなどでは外国人の店員が主力になっているのが現実ですが、テロなどの危険性もあるため、受け入れの基準については神経質にならざるを得ないでしょう。ヨーロッパのような受け入れは、日本ではやるべきではないと思います。
AIやロボットに課税する仕組みを
――日本の労働力不足をAIと結び付けて解決していくことはできないのでしょうか。
中原 今のAIにはいろいろと問題があると思いますし、AIだけですべての問題を解決できるわけではありません。なかでも、画像処理に関してはさまざまな課題があります。今後、高精細の4Kや8Kが主流になっていくにつれてAIの役割も飛躍的に大きくなると思います。
――いずれにせよ、AIの台頭で仕事がなくなると消費も減退しますが、その点については。
中原 消費も大きく変わりました。アメリカの若者の消費動向を見ると、古着が4~5回転ぐらいしています。新しい商品を積極的に買うなど消費が活発な時代ではなくなってきているわけですが、そうした消費行動はGDP(国内総生産)の計算には入っていません。そのため、GDPでは今の消費行動を正確にとらえることができないわけで、もはやGDPをベースに国の政策を考えるべきではないと思います。
『日本の国難 2020年からの賃金・雇用・企業』 アメリカ人の借金の総額がすでにリーマン・ショック時を超え、過去最高水準を更新するなど、いま、世界では「借金バブル」が暴発寸前となっていることをご存じだろうか。翻って日本では、大企業の淘汰・再編、増税による可処分所得の減少、生産性向上に伴う失業者の増加など、日常生活を脅かす様々なリスクが訪れようとしている。まさに「国難」ともいえるこの状況に、私たちはどう立ち向かえばいいのか。いち早く「サブプライム崩壊とその後の株価暴落」を予見していた経済アナリストが、金融危機「再来」の可能性について警鐘を鳴らすとともに、大きく様変わりする日本の近未来を描く――。