【入管法改正】外国人労働者の受け入れ拡大に伴う医学・生物学的危惧
外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法改正案によると、制度導入予定の平成31年度から5年目までの合計で、介護業が6万人、外食業が5万3000人、建設業が4万人、農業が3万6500人、ビルクリーニング業が3万7000人、飲食料品製造業が3万4000人など、14業種で最大34万5150人を受け入れる見込みであるという。
日本で現在働いている外国人の在留資格は、以下のとおり分類される。
(1)専門的、技術的分野
大学教授、医師、会社経営者など
(2)身分に基づく在留資格
夫や妻が日本人、日系人、特別永住者(在日韓国・朝鮮人)
(3)技能実習
開発途上国に対する国際協力により、農家や町工場などで技術を習得しながら働く
(4)特定活動
EPA(経済連携協定)に基いて派遣された看護師、介護福祉士の健常者
(5)資格外活動
留学生らが週28時間以内でパートタイマーとして働く
また、今後新設される在留資格は、以下のとおりである。
(1)特定技能1号
在留期限が通算5年で家族の帯同は認められない
(2)特定技能2号
熟練した技能を持っている人が対象で、家族の帯同や、条件を満たせば将来の永住も可能
「日本が日本でなくなる」危険
今、ヨーロッパやアメリカでは移民受け入れ政策に対し、それを阻止すべく極右の勢力が台頭し、社会問題化している。宗教、言語、生活習慣、主義信条の違った人たちがいきなり入国してくると、種々の摩擦や軋轢が生じるのは当然であろう。
ただし、労働者不足により日本経済が危機的状況にあるなら、一時的に「特定技能1号」の外国人労働者を受け入れるのは仕方がないだろう。問題は、「家族帯同」と、条件を満たせば将来永住可能の道が開ける「特定技能2号」の労働者である。
文化・文明が発達し、環境も清潔、生活も便利、人にも優しいという国民性、犯罪が極度に少ない「夢の国、憧れの国、日本」に働きにくる外国人労働者には、出身国で裕福な人は少ないだろう。賃金の高い日本で働き、本国にいる家族や親族に仕送りをしたいというハングリー精神の持ち主がほとんどであろう。飽食である日本の人々に比べて、文字通り「hungry空腹」でやや栄養不足の人々が多いと思われる。
私が生まれた1948(昭和23)年前後は、第二次世界大戦に敗れ、日本人みんなが「hungry」を余儀なくされたにもかかわらず、史上空前のベビー・ブームが到来した。今でも食糧が不足する傾向にある南アジアやアフリカの一部地域には、子供がたくさんいる。つまり人間(動物)は少しhungry=食糧不足(栄養不足)に陥ると生殖力が増強される。逆に飽食になると生殖力は低下する。今の日本人夫婦の6組に1組が不妊に悩んでいる事実が、そのことを雄弁に物語っている。
よって、肉体的にも精神的にもややhungryな外国人が夫や妻を帯同して来日し、将来永住も可能となると、外国人の人口が爆発的に増える可能性がある。一方、子供の数が不足して(=外国人労働者の受け入れ拡大の最大の原因)日本人の数はだんだん減っていき、「日本が日本でなくなる」危険性が出てくる。
貴乃花“追放”が示唆すること
大相撲の部屋(現在46部屋)の親方らは、月100万円以上もの給料が支給(横綱は280万)されて大銀杏を結い、付き人もいる関取力士を育てるために、苛烈な競争をしてきた。よって日本人より体力も優れ、ハングリー精神が旺盛なハワイ出身やモンゴル出身の若者に目をつけ、自分の部屋で養成してほかの部屋との競争に勝とうとした結果、曙や武蔵丸などのハワイ勢の横綱を生み、最近10年では、朝青龍、白鵬、日馬富士などのモンゴル人横綱を輩出した。
その強い外国人横綱と必死の戦いを演じ、22回の優勝を誇ったのが日本人の大横綱・貴乃花だった。引退後は一代年寄として部屋を起こし、今年九州場所で優勝した貴景勝をはじめ多くの関取を育てた。その元大横綱が、モンゴル出身の横綱日馬富士による愛弟子貴ノ岩への傷害事件ですったもんだした挙句、今年10月には相撲協会を“追放”される結果になった。加害者の日馬富士には、国技館で満員の観衆を集めて引退相花撲まで挙行されたのに。
この事件が、家族帯同という条件を満たせば永住可能になる今回の外国人労働者の受け入れ拡大による結果、外国人の人々が増え、逆に日本人の人々が減っていく、つまり「外国人の増加による日本人の“駆逐”」を暗示していなければよいのだが……。
(文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士)