大相撲・幕内の貴ノ岩が4日、巡業先の福岡で自身の付け人に暴行をはたらいていたことが発覚した。貴ノ岩は宿舎の部屋内で、付け人の貴大将が忘れ物をした際に言い訳をしたとして、平手や拳などで4、5発ほど殴打したという。これを受け日本相撲協会は貴ノ岩に事情聴取を行い、貴ノ岩は事実を認めているという。
貴ノ岩といえば昨年、横綱(当時)日馬富士から暴行を受けた“被害者”として注目を浴びる存在となった。貴ノ岩の師匠だった貴乃花親方(当時)が警察に被害届を提出し、日馬富士は現役を引退。事態への対処をめぐり相撲協会と貴乃花親方は鋭く対立し、結局、元貴乃花親方は今年9月に相撲協会を退職。貴乃花部屋は消滅して、貴ノ岩は千賀ノ浦部屋へ移籍していた。
貴大将の母親は6日放送のテレビ番組『とくダネ!』(フジテレビ系)の取材に応じ、「(暴行を受けた際に貴ノ岩に)お酒が入っていることは子どもから聞きました」とコメント。貴大将の兄は「(貴大将から、貴ノ岩は)大変って聞いていて、わがままで」と明かした。また、貴ノ岩が日常的に下の力士らに暴力を振るっていたという証言も報じられているが、スポーツライターで相撲ライターの西尾克洋氏は次のように語る。
「貴大将のご家族のコメントから考えるに、貴ノ岩に“そういう資質”があったということでしょう。ただ、ここで気になるのは、日馬富士による暴行事件をめぐり報道が加熱するなかで、なぜそういう情報が表に出てこなかったのか、という点です。一連の騒動では、相撲協会の八角理事長サイドと元貴乃花親方の間で、激しい情報リーク合戦が繰り広げられていました。そのなかで貴ノ岩による暴行などマイナスの情報が出てこなかったということは、限られた人たちの間で封じられていたということでしょう」
世論と相撲協会
相撲協会は6日、貴ノ岩を謹慎処分としたが、今後どのような対応をみせるのだろうか。
「昨年の日馬富士事件以降、相撲協会はとにかく世論の意向を気にして、世論を敵に回さないことを第一に考えて行動しています。もし貴ノ岩に引退勧告などの厳しい処分を下せば、『罰が重すぎる』と言われかねず、逆に一定期間の謹慎だけですませば『甘すぎる』と言われかねない。どちらにせよ批判を浴びる恐れがあるので、相撲協会は貴ノ岩が自発的に引退するように仕向けていくのではないかとみています」(同)
暴力事件が耐えない角界だが、力士たちはどうみているのか。
「日馬富士事件の際には、『本当に迷惑だ』『引退してくれて清々した』という声も力士たちから多く聞かれました。今、ほとんどの力士は相撲ファンを増やして大相撲を盛り上げるために、日頃からファンサービスなどにも、ものすごく熱心に取り組んでいます。そうしたなかで、一部の力士のせいで大相撲全体にダーティーなイメージがついてしまうことに対して、大多数の力士たちは怒りを感じています。約10年前の時津風部屋での力士暴行死亡事件以降、角界は本当に変わってきています。鉄拳制裁的なことは、確実に減ってきています。そういうなかで、こうした事件が続くことには胸が痛みます」(同)
また、角界関係者は語る。
「鍛錬としての“しごき”は存在しますが、角界全体でも“暴力はダメ”という認識は確実に広まっており、危険で理不尽な暴力はかなり減りました。しかし、貴ノ岩の暴力体質は一部では知られた話でしたし、3月には元貴乃花部屋の貴公俊による付け人暴力事件も発覚しています。結局、改革派を掲げていた元貴乃花親方の部屋内では、暴力が横行していたということでしょう。いずれにせよ、日馬富士が引退している以上、貴ノ岩の引退は免れないというのが相撲協会の考えです」
大相撲界の自浄作用に期待したい。
(文=編集部)