昨年12月20日に発生した、韓国海軍駆逐艦による海上自衛隊のP1哨戒機への火器管制レーダーの照射問題は、年が明けた1月2日に照射を否定する韓国国防省が海自機の「威嚇的な低空飛行」に謝罪を要求、5日には、年末に日本側が公開した動画に対し“反論動画”を公開する事態にまで発展した。ただ、海上自衛隊の関係者に話を聞くと、誰もが「韓国軍側の行動こそ国際的なルールに反した行為」と語気を強める。
いったい何が問題なのか?
まずは日本政府が12月28日に公開した当時の動画を振り返ろう。13分7秒に及ぶこの動画は、海自のP1哨戒機が韓国のクァンゲト・デワン(広開土大王)級駆逐艦に接近する場面から始まる。海自の哨戒機の主任務は、日本近海を航行する他国軍の艦艇や潜水艦をレーダーなどで発見し、動向を監視することだ。ある海上自衛官は「韓国は同盟国(米国)の同盟国であり、通常は韓国軍の艦艇とわかったところで監視はやめる」と明かすが、「今回は特異なケースだ」とも指摘する。駆逐艦のそばに韓国海洋警察庁(日本の海保に当たる組織)の警備救難艇、さらに北朝鮮のものと見られる漁船がいたからだ。海自の哨戒機や艦艇は昨年初め頃から北朝鮮船舶による「瀬取り」(国連安保理決議で輸出入が禁止されている石油などを洋上で移しかえる行為)の監視を始めており、複数の船が近接しているところをレーダーでとらえた場合は、動向を調べるのが通例だという。
前出の自衛官は「特異事例を見つければ、舷側に書かれている艦番号を目視で確認できるところまで接近し、機内から写真撮影などを行うのは日常的な行為」と話す。実際、海自の哨戒機は日本近海まで接近した中国やロシアの艦艇に近づいて写真撮影し、「特異な航行例」として防衛省のホームページで写真を公表している。こうした飛行をしても、中国やロシアが「威嚇」などと反発することはまれだ。
休戦しているとはいえ、北朝鮮との「戦争」をいまだに続けている韓国軍にとって、哨戒機の接近は「異常」に思えるのかもしれない。百歩譲ってそう考えてみても、その後の韓国駆逐艦の行動はやはり不可解だ。