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安倍政権の外国人労働者受け入れ拡大、外国人犯罪急増で凶悪化&多国籍化…犯罪集団も形成

文=田村建雄/ジャーナリスト
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 追跡15年――。今年1月、茨城県警が執念で茨城大女子大学生の殺人容疑者としてフィリピン籍の33歳の男を逮捕したことに、警察庁や法務省内で評価が高まっている。その理由は、今年4月から入管法が改正され、5年間で30万人以上という大量の外国人労働者が流入する可能性が高まっているからだ。

 急激な増加とともに懸念されるのが、外国人犯罪の増加だ。そんななか、15年を経ての今回の犯人検挙に意義があるのは、犯罪の未然防止という観点から見ると、凶悪犯は何十年たっても必ず検挙するという日本の警察の強い姿勢を示したからだ。世界に向けて日本の警察捜査能力の高さを示す意味でも、重要なタイミングでの摘発といえよう。

 今年1月24日午後9時過ぎ、成田空港の一部には緊迫した空気が流れていた。空港通路に赤っぽいアノラック風のショートコートに黒っぽいマスクを付けリュックを背負った小太りのアジア人の若者、そして前後を固める日本人男性。入国審査ゲートを通過後、前後の男性らに周囲を取り囲まれた。

 このアジア人の若者こそ2004年1月、茨城大農学部の女子大学生(当時21歳)を殺害した事件の犯人のひとりで、茨城県警が国際刑事警察機構(ICPO)、通称インターポールを通じて国際手配していたフィリピン国籍の男(事件当時18歳)だ。1月24日午後10時前後、マニラからの飛行機で成田空港到着、日本入国後、殺人と強制性交致死容疑で茨城県警の捜査員に逮捕されたのだ。

 この事件では2年前、主犯格の男が逮捕され3人による犯行を自供している。主犯格の男とは、すでに一、二審で無期懲役の判決を受けているフィリピン国籍のランパノ・ジェリコ・モリ被告(37)。残る1人に関しては、いまだ国外逃亡中だ。

事件発生と捜査

 筆者がこの事件を注視してきたのは、15年前の事件発生直後、週刊誌記者として約1カ月以上にわたり現地に張り付き、この事件を追ったからだ。

 事件は04年の1月31日午前9時頃、茨城大農学部(茨城県阿見町)近くの霞ヶ浦に流れ込む川の河口付近で遺体が発見され発覚。朝、犬の散歩中の近隣住人が、うつぶせ姿で水面に浮いていた全裸遺体を偶然に発見。110番通報で駆け付けた警察の調べで、遺体は前夜から行方不明の茨城大農学部2年生だったHさんと判明する。

 遺体が発見されたのは日本中央競馬会のトレーニング施設もある茨城県南の美浦村の清明川河口付近。死体が発見された河口は国道から約30メートル、細い道路を入った地点。ここに遺体を捨てるということは土地勘がなければできない、ともみられた。

 捜査本部も状況から、Hさんの人的関係を丁寧にたぐれば事件は早晩、解決すると思っていた節もあった。しかし、捜査は予想外に長期化の様相を呈し始めた。当時の捜査関係者は述べる。

「怨恨説で早期の事件解決かと思われたが、友人、知人関係が次々とシロだと判明。捜査は徐々に長期化、迷路に突入していったのです」

 捜査当局も捜査員延べ3万5000人を投じ、事情聴取者は延べ約1万人にも及んだ。しかし、いずれも犯人に結び付く決定的なものは得られず、事件は「迷宮入り」の気配さえ漂いだしていた。しかし、水面下では、この嫌な空気を払拭したいとばかりに粘り強い捜査が進められていたのだ。

「2010年の重大犯罪時効廃止も大きかった。そして11年には未解決事件専従班が設けられたことが、捜査陣にヤル気と地道な捜査を続ける動機づけになりました」(同)

 そして、粘り強く捜査を続けていた専従捜査班に、思いもよらぬ情報がもたらされた。

「事件をほのめかしているアジア系外国人たちがいたという情報が、もたらされたのです。その情報を丹念に追っていくと、ひとりのフィリピン人の男が浮上してきたのです。それがランパノ被告です」(同)

 情報に基づき捜査員が、ランパノらの当時の行動を追った。すると、ランパノは当時事件発生地近くに住み、死体遺棄現場近くの電気関連工場で働いていた。その後、結婚して家族も持ち、17年には岐阜県で働いていることも判明。さらに事件当時ランパノにフィリピン人の仲間2人がいたこともわかってきた。

「事件は急展開したのです。捜査員が数年前にランパノが住む岐阜を極秘訪問、DNAを採取した。それがHさんの手の平に残されていたDNAと一致したのです。しかし、その当時、ランパノ以外の2人はフィリピンに帰国していたため、捜査当局は一網打尽を模索した。だが日本とフィリピンに容疑者引き渡しの条約もなく、捜査は難航。そんな折、ランパノがフィリピンに帰国するという情報が飛び込んできたため、緊急逮捕になったのです」(同)

震撼の事件の内容

 逮捕されたランパノが自供した事件内容は、まさに震撼する内容だった。

 事件前日、ランパノの部屋で3人の犯行者らは酒を飲んだ。コンビニに出かける途中の車の中で、誰でもいいから女を拉致して強姦することを決めたという。

「強姦するかどうかをコイントスで決めたという話さえあった」(同)

 彼らの視線の先に偶然飛び込んできたのが深夜、自転車で走行するHさん。自転車の前に車を急停車、Hさんの口をふさぎ、車に押し込んでレイプ、空き家に連れ込み殺害したという。この間、まさに1時間にも満たない短時間での犯行。もしHさんがこの時間に外出していなければ、他の女性が不幸にあっていたかもしれない。

 外国人労働者が性欲の解消のために日本人女性を狙い、たまたま通りかかったHさんが犠牲になったという悲惨な事件。

「自分で家族を持ち、娘や息子を持てば、そんなことは普通ではとてもできない。異国という解放された環境で、よその地なら何をやっても許されるという気持ちがどこかにあったのかもしれない」(同)

外国人による犯罪増加

 今年4月、入管法が改正されるが、この事件発生当時の外国人労働者の日本への入国状況と外国人犯罪は、どういう状態だったのか。2004年といえば、自民党・小泉純一郎政権時代だ。

 当時の統計を見ると、日本の外国人労働者数は日系人、不法就労なども含めると03年で約78万人。外国人犯罪の刑法犯による検挙人員は04年で8898人。この数字は、バブル突入直前の82年の9123人に次ぐ高いものだった。外国人犯罪が急増していたのだ。

 同時に凶悪犯罪も多発した。例えば私が取材した大分県の山香町夫婦殺傷事件(02年)では、当時70代の建設会社会長が殺害された。被害者は中国人留学生の身元保証人になり、日中関係の懸け橋になっていた人物。身元保証人になってあげた相手の男らに金目当てで殺害された。

 03年には福岡市で衣料品販売をしていたMさんは、妻と2人の小学生の子どもとともに殺害された。いわゆる一家みな殺し事件。やはり金目当ての中国人留学生らが逮捕された。

 このように外国人犯罪が急増するなかで、茨城大のHさんは、3人の凶悪な外国人犯罪者に無残にも未来の夢を絶たれたのだ。

入管法改正の背景

 そして、それから15年。外国人労働者数は2017年の厚生労働省の調査で、約128万人と過去最高となった。03年より約50万人増えている。

 今、日本は団塊世代の大量定年退職と景気好調が重なり、労働者数が不足している。そのため建設、農業、製造業、介護などでは軒並み労働力不足。なかには経営は黒字ながら倒産する「黒字倒産」も急増。

 帝国データバンクが19年1月に発表した「人手不足倒産の動向調査」の結果によると、18年に発生した「人手不足倒産」は前年比44.3%増の153件にのぼり過去最高という。今や日本中が「人手不足」であえいでいる。

 野党の「早急すぎる」という批判をよそに、安倍政権が急ピッチで単純労働者まで受け入れ対象を拡大する入管法改正を急いだのは、全国の自民党の基盤である中小企業からの人手不足の悲鳴に後押しされたからにほかならない。今回の改正で、25年には50万人超の外国人労働者を受け入れるという。

 大手シンクタンク・日本総研は、30年には外国人労働者が280~290万人になると試算する。かつては外国人犯罪といえば中国人によるものが多かったが、それ以外の国籍の外国人による犯罪も増えている。

 昨年秋、東京・大田区のネパール料理を提供する飲食店で、ネパール人男性に暴行を加えけがを負わせた傷害容疑で、警視庁組織犯罪対策2課は19歳から22歳のネパール国籍の男5人を逮捕した。

「ささいなことから暴行を加えたネパール人は、このところ急速に力を増しているネパール人不良グループ。蒲田○○とかロイヤル蒲田○○などとネーミングされる100人とも200人ともいわれるネパール人の若者らのグループ。これがさらに粗暴化し、凶悪犯罪集団にならないようウォッチしている」(捜査関係者)

 ベトナム人による犯罪も急増している。ベトナム人留学生の数は、17年には6万人以上に急増。犯罪検挙件数も17年には5140件に達した。犯罪は窃盗が主で、盗品は母国に密輸する。 

 そしてアフリカンマフィアも増えている。昨年暮れ、海外の企業からだまし取った疑いがある資金を金融機関から不正に引き出したとして、警視庁組織犯罪対策課は、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益隠匿)などの疑いで、ナイジェリア国籍の男を逮捕した。男には数億円の詐欺容疑もあるという。

 ボコハラムなど過激派マフィアでも有名なナイジェリアは、アフリカ西部にある産油国で、政情不安定で国内の混乱が続く。そうしたなかで海外での犯罪で一旗揚げようというナイジェリアマフィアは中国、日本などで跋扈する。ナイジェリア人中心の国際ロマンス詐欺で仙台、福岡の女性らが数百万円を搾取される結婚詐欺も急増中だ。日本の繁華街で執拗な客引きをしたり、ぼったくりバーの経営なども平気だ。

「知能的な新犯罪集団として巨大化することを懸念している。やがてナイジェリアなどを中心にアフリカンマフィアとベトナム、ネパール、フィリピンなどの新アジアンマフィアが大きな勢力になる可能性も高い」(警視庁関係者)

 来年は東京オリンピック、25年は大阪万博などの国際的行事を迎え、外国人入国者は今後も増加する。そして新入管法で外国人労働者も急増するなかで、犯罪も比例して増加する可能性は否定できない。そうしたなか、15年前の茨城大学生殺害事件のフィリピン人の犯人が逮捕された。

「捜査当局はフィリピンとの間で犯罪者引き渡しに関する取り決めがないなかでも、犯人のフィリピン在住場所も確定し、熱心に自首を勧め逮捕にこぎつけた。男は事件前後、覚せい剤を使用していたとの情報もあり、責任能力を調べるため3カ月の鑑定留置を実施中」(全国紙社会部記者)

 今回の犯人検挙が、急増が懸念される外国人凶悪犯罪を未然に防ぐ一助になることを祈りたい。
(文=田村建雄/ジャーナリスト)

田村建雄/ジャーナリスト

田村建雄/ジャーナリスト

1950年茨城県生まれ。茨城県の地方紙(常陽新聞社)記者を経て、週刊誌専属記者に。その後、フリージャーナリストとして、月刊誌、週刊誌、夕刊紙などに、政治、社会問題ルポを中心に執筆。著書に『ドキュメント 外国人犯罪 金のためなら命はいらない』、『産廃汚職 利権に群がる議員・業者・暴力団』、『北朝鮮利権の真相』(共著)など。

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