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木村誠「20年代、大学新時代」

上智・青山学院・立教の“JALパック”入試動向を徹底解説…青学の新学科が大人気

文=木村誠/大学教育ジャーナリスト
青山学院大学の青山キャンパス校門(「Wikipedia」より)
青山学院大学の青山キャンパス校門(「Wikipedia」より)

 現在はMARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)がスタンダードな括り方になっているが、それぞれ校風や受験生のタイプが違うことを度外視して、学力偏差値だけでグループ化しているので、少々無理がある。G(学習院)を頭にプラスして、GMARCHとしたところで代わり映えはしない。SMART(スマート)、すなわち上智・明治・青学・立教・東京理科に国際基督教大学を加えたISMART(アイスマート)も同様だろう。

 校風や受験生の傾向からいえば、旧来からミッション系で女子受験生に人気のJALパック(上智・青学・立教)の方が、括り方では自然であろう。ただ、同じキリスト教であっても、上智はカトリック、青学は米国プロテスタント・メソジスト、立教は米国聖公会で、ルーツは違う。だから、太平洋戦争時、同盟国の独伊にカトリック信者が多かった関係で、上智は官憲の監視が緩やかであったが、敵国米英の聖公会系の立教への監視は厳しかった、といわれる。

 入試の方針も、明治・中央・法政とJALパックは対照的だ。たとえば、地方試験会場は中央・法政が延べ9カ所なのに対し、上智と立教は0、青学だけは箱根駅伝効果もあるせいか3カ所となっている。ちなみに、早慶は0である。

 上智と立教は地元東京圏の受験生の割合が高く、学校推薦型選抜(旧推薦入試)と総合型選抜(旧AO入試)の対象校が全国にあり、同系のミッションも多い特色が、あえてコストのかかる一般受験生向け地方会場を設けない背景にあるのだろう。

 なお、JALパックの2021年入試の志願者数増減率で、立教は前年比106.8%でトップクラスの伸び、青学は69.4%で最大の減少率、上智は100.4%とほぼ変わらずであった。22年入試はどうなったか。各大学の入試の動向を踏まえてアプローチしてみよう。

上智大学…22年入試の補欠合格数に注目

 21年入試では、約50%に達する補欠(追加)合格数に度肝を抜かれた。その原因は、一般選抜のTEAPスコア利用型(全学部統一日程試験)、学部学科試験・共通テスト併用型、共通テスト利用型という多様な方式にある。

 TEAP(ティープ)は、上智が中心になっている民間の英語力検定試験である。共通テストは国公立受験者必須なので、特に「共通テスト利用型」には人気の上智ということもあって、当然、国公立受験者が併願先として殺到する。現に、どの学部も「共通テスト利用型」の志願倍率は、募集人員が少ないこともあって、他の方式より非常に高い。

 22年入試でも、たとえば文学部は「TEAPスコア利用型」8.5倍、「学部学科試験・共通テスト併用型」9.5倍なのに対し、「共通テスト利用型」は24.7倍となっている。ほかの文系学部も似たような傾向だ。

 理工学部になると、その差は激しい。「TEAPスコア利用型」は4.6倍、「学部学科試験・共通テスト併用型」は19.5倍に対し、「共通テスト利用型」はなんと82.3倍となっている。国私併願の場合は、やはり第1志望の国公立に合格すれば入学辞退する者は多くなり、上智は補欠者を相当数想定することになる。そのため22年入試では、補欠合格より正規の合格者数を多めに発表すると思われる。

 22年度から始まる全学共通の教養教育は、上智の校風を端的に表している。人間の思考のベースを学ぶコア科目群は、キリスト教人間学とデータサイエンスなどとなっている。この異質な組み合せこそ、上智らしい独自な発想だ。

 さらに、展開知科目群は学問領域にこだわらず、学生の主体性を尊重して「実践・経験・社会展望と課題・視座」の3つのカテゴリーに分けている。特に、「視座」という言葉は上智好みの表現だ。それは社会的・人文的な現象を観察する立場のことであり、それはキリスト教思想に基づく、ということであろう。

 上智はカトリック系大学としての使命感も強く、全国の同系の高校からの特別枠がある。それとは別に指定校推薦入学枠も充実している。

青山学院大学…昨年の志願者離れはストップ

 22年、お正月恒例の箱根大学駅伝は青学の圧勝に終わった。選手層の厚さが勝因で、数年間は青学の天下が続くともっぱらの評判だ。

 同校の受験動向を見ると、21年の総志願者数は前年比70%弱に減少したので、22年はどうなるか注目された。昨年の志願者減の要因は、①経済学部、理工学部、文学部英文学科を除く学部で個別試験科目のみの入試がなくなったこと、②全学部統一日程試験を除き、大学入学共通テストの結果と学部独自の試験結果で合否判定をする方式に変えたことである。そのため、共通テストを受けない私大専願受験者が敬遠した、という見方が自然である。

 22年の一般選抜の志願者動向を見ると、駅伝と同じく復調している。全学部日程入試では、昨年の8539人から1万1958人と増加している。個別学部日程入試では、昨年は2万2115人だったのに2万4400人となっている。22年4月に法学部ヒューマンライツ学科が開設されることを計算に入れても、増加傾向にある。競争率が下がった昨年の反動と言ってもよい。特に受験生の理系志向を反映して、理工学部に人気があるようだ。

 新設の法学部ヒューマンライツ学科は、募集人員約55人と小ぶりなのに個別学部日程で420人、全学部日程で742人の志願者を集めた。「法は人権が尊重される社会を実現するためにある」という原点から、問題解決に必要とされる法・政治・経済についての生きた知識を学ぶ。学科の名称に「人権」でなく「ヒューマンライツ」を冠しているのは、国境を越えた普遍的な価値としての人権概念に基づいているからだ。

 データの分析手法を学ぶ「社会調査論」のほか、「政治学入門」「経済分析入門」「公共政策入門」が1年次に選択必修とされている。2年次には「戦争・紛争と人権」「貧困と人権」「ジェンダーと人権」など、具体的な人権に関わるテーマ別科目を履修できる。日本赤十字社とのタイアップで開講される「国際社会と人道支援」など、従来の法学部とは明らかに違う。いかにもミッション系らしいグローバルな学びといえよう。

立教大学…今春も魅力発揮のユニークな全学部日程

 21年の大幅な志願者増は、ユニークな全学部日程の入試方式を導入したことが要因だろう。学部別試験日でなく、科目パターンごとの試験日を設定したのだ。文系と理系で違いがあるものの、文学部を除き、試験科目パターンで受験可能な学部なら、同じ試験日に複数の学部を受験できる。いわゆる「コスパの良い併願」となるわけだ。試験日は5日間設定したが、その結果、受験生一人当たりの学内併願(複数学部受験)が増加、総志願者数も増加したのだ。

 22年の「大学入学共通テスト利用入試」志望倍率は上智と同じく高倍率で、法学部は66.4倍、経営学部は42.4倍、経済学部は34.9倍、文学部が34.5倍となっている。上智、立教とも、受験の作戦としては、大学入学共通テスト利用入試は志願倍率が高く、合格可能性の点で「あんまりあてにしてはいけない入試」ということであろう。さすがに全学部日程入試は昨年より微減となっているが、相変わらず人気は高い。

 立教は、かつて長嶋親子が活躍した野球部のイメージもあり、ミッション系というイメージは薄かった。しかし、最近の取り組みを見ると、ミッション系らしくグローバル色を強く打ち出し、全学で取り組んでいる。

 具体的には「立教に経営あり」と声価を高めた立教GLP(グローバル・リーダーシップ・プログラム)は、数年を経てしっかりと全学部に定着し、多国籍企業と連携して課題解決型授業などを展開している。そのアクティブラーニングが、いよいよ成果を発揮するときが来たのだ。

 さらに、学部の枠を超えた全学的な取り組みとして「RIKKYO Learning Style」がある。4年間を通して、導入期→形成期→完成期とプレゼンや時間管理などを学ぶ仕組みである。今後は、AIやデータサイエンスなどもテーマにしていくという。

 23年には新座キャンパスに健康科学とウエルネスを学ぶスポーツウエルネス学部(仮称)が新設される予定だ。

●明治学院大に2024年、初の理系学部

同じミッションでも前身が英語塾で文系学部のみだった明治学院大学に、初の理系学部が誕生する。その情報数理学部では、ICT(Information and Communication Technology)を活用した授業やPBL(Project Based Learning)なども活用し、産学官連携の機会創出にもつながると期待されている。

(文=木村誠/大学教育ジャーナリスト)

木村誠/大学教育ジャーナリスト

木村誠/大学教育ジャーナリスト

早稲田大学政経学部新聞学科卒業、学研勤務を経てフリー。近著に『ワンランク上の大学攻略法 新課程入試の先取り最新情報』(朝日新書)。他に『「地方国立大学」の時代–2020年に何が起こるのか』(中公ラクレ)、『大学大崩壊』『大学大倒産時代』(ともに朝日新書)など。

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