トランプ米大統領は5月3日、ロシアのプーチン大統領と電話で会談し、米大統領選へのロシア介入疑惑に関するモラー米特別検察官による捜査報告書について短時間協議した。トランプ氏によると、プーチン氏は笑い混じりに「大山鳴動してネズミ1匹」という趣旨の発言をしたという。
米ロ首脳の電話会談は、モラー氏の捜査報告書が3月24日に公表されて以降初めて。報告書ではトランプ陣営とロシアの共謀は認定されず、米政府筋のリークをもとに共謀はあったと書き立ててきた米欧の大手メディアは、面目を失った。まさに大山鳴動してネズミ1匹だ。
ところで米CNNテレビによると、トランプ氏は電話会談後、ホワイトハウスで記者団から、次期大統領選へ介入しないようプーチン氏に要請したかと聞かれ、「それについては話し合わなかった」と答えた。
このやり取りをプーチン氏が知ったら、苦笑することだろう。確かに、モラー氏の報告書ではトランプ陣営との共謀は認定しなかったものの、ロシアによる選挙介入そのものを否定したわけではない。しかし、かりにロシアによるなんらかの介入があったとしても、それを米国が非難する資格はない。米国自身、これまで他国の内政に露骨な介入を何度も繰り返してきたからだ。
最近日本語版が刊行された、米ジャーナリスト、ウィリアム・ブルム氏の著書『アメリカ侵略全史』(作品社)によれば、第二次世界大戦後、米国政府が世界中の主権国家に対して行った介入は、重大なものだけで70~80カ国に及び、その回数は100回を優に超えるという。
ブルム氏が同書で扱った米国の介入とは、成功したかどうかは別として、政府の転覆を狙った介入や、非民主的な政府に対する人々の変革運動や革命を弾圧するために行われた介入を指す。また、暗殺、諸外国の選挙に対する重大な工作、大規模なメディア操作、労働組合の転覆などを含む。
同書やその他の資料によると、米政府が行った介入のうち、ごく一部だけでも以下のようなものがある。
【ギリシャ】
第二次大戦後、ギリシャでは内戦が起きていた。大戦中にギリシャを占領したナチスに協力していた右派と、ナチスと戦ってギリシャから追い出すのに成功した左派との戦いである。この内戦で、米国は戦時中に敵だったはずの親ナチスの側につく。
当時米国がもっとも恐れていたのは、世界中のどこであれ、左派や社会主義者、共産主義者の政府ができることだった。そのため、そうした勢力の圧殺に動く。ギリシャはそのもっとも初期の例のひとつといえる。1947年からの数年間にわたって頻繁に首相が交代するが、大部分は米国からの圧力の結果だった。