政府の介入に協力するメディア
忘れてはならないのは、こうした米政府の介入に大手メディアが協力してきた事実だ。
一例をあげよう。ウォーターゲート事件報道で知られるワシントン・ポスト紙のボブ・ウッドワード記者は1983年3月、CIAがニカラグアへの介入のため、前出のコントラのメンバーを密かに訓練し、武装させていることを知る。だがベン・ブラッドリー編集主幹は「今はレーガン政権の時代」であることを理由に、「もはや、なんでもCIAの秘密を暴けばいいというわけではない」と記事化に反対し、ウッドワードもそれを受け入れた。
米ジャーナリスト、ニコラス・スカウ氏によれば、ブラッドリーは1950年代初頭にパリの米国大使館の報道官だった頃から、CIAと親密な関係にあった。ウッドワードも1960年代、海軍にいた頃に諜報活動に従事していたとかねてから噂されてきた(本人は否定)。
現在、米国の新たな標的は南米ベネズエラだ。トランプ政権は反米左翼のマドゥロ大統領に反発して厳しい経済制裁を科し、軍事介入まで示唆する。米大手メディアはマドゥロ大統領を悪玉として報じ、米政府を側面支援している。
マドゥロ政権の社会主義政策がベネズエラの社会を混乱させ、国民を苦しめたのは事実だが、今後の国の進路はベネズエラ国民が決めるべきことである。外国の介入は混乱に拍車をかけるばかりだ。
ロシア疑惑では自国に対する介入を声高に非難しながら、他国に対しては平然と介入を繰り返す米政府と、それを支持する米メディアのダブルスタンダード(二重基準)。日本のメディアはその矛盾を正しく指摘するべきだろう。
(文=木村貴/経済ジャーナリスト)
<参考文献>
ウィリアム・ブルム、益岡賢他訳『アメリカ侵略全史 第2次大戦後の米軍・CIAによる軍事介入・政治工作・テロ・暗殺』作品社
野口英明『世界金融本当の正体』サイゾー
ニコラス・スカウ、伊藤真訳『驚くべきCIAの世論操作』集英社インターナショナル