育児休暇を取得した男性社員は“見せしめ”に遭ったのか――。
育休明けの男性が転勤を命じられ、インターネット上で「パタハラ(パタニティ・ハラスメント)ではないか」と指摘され、大きな話題になっている。舞台となった「株式会社カネカ」がコメントを発表し、さらなる波紋を広げている。
事の発端は、今年4月にツイッターへ投稿された「夫、育休明け2日目で上司に呼ばれ、来月付で関西転勤」という一般ユーザーの訴えだ。新居に引っ越したばかりであることや、2人の子どもを抱えているという事情もあり、会社に転勤の先延ばしを依頼したものの拒否されたという。
その後も投稿は続き、「転勤はムリだから夫退職するしか無いと考えてるが、男性育休とったらこうなる、という見せしめ、事例になるのは不本意」(原文ママ)と報告。会社名は伏せていたものの、一連の投稿内でカネカのキャッチコピー「カガクでネガイをカナエル会社」をタグづけしたことで、カネカがパタハラを行っているとの批判が巻き起こり、騒動が拡大した。
6月に入ると、投稿者は「いろいろかけ合い、有給も取らせてもらえず、結局昨日で退職、夫は今日から専業主夫になりました」と夫の退職を報告しつつ、「産後4カ月で家族4人を支えます」と宣言。ネット上では「どう考えても報復人事でしょう」「そんな会社は辞めて正解!」「国が男性社員の育休取得を推進しているのに、カネカの対応はあり得ない」といった声が相次いだ。
Business Journal編集部が炎上騒動について問い合わせると、当初は「元カネカ関係者かどうか確認中である。ただ、有給取得も申請すれば繁忙期でない限り普通に取得できるし、女性はもちろん男性も育休できる環境にあり、特段問題はなかった」との回答だったが、6日になって初めて公式に見解を発表した。
カネカは6日、「当社元社員ご家族によるSNSへの書き込みについて」と題した文面を公式サイトに掲載。転勤の内示は育休に対する見せしめではないとした上で、「結果的に転勤の内示が育休明けになることもあり、このこと自体が問題であるとは認識しておりません」と記している。
また、着任日の先延ばし依頼を拒否した理由について、「元社員の勤務状況に照らし希望を受け入れるとけじめなく着任が遅れると判断して希望は受け入れませんでした」と明言。結びの文章で「元社員の転勤及び退職に関して、当社の対応は適切であったと考えます」と見解を示した。
投稿者は「仕方なく連休明けに上司に、5月に関西転勤はできないから退職しかない、と伝え、ただ夫はじめたプロジェクトを責任持って軌道に乗せたいから東京で6月まではやらせてほしい、次への準備に20日以上余った有給を消化させてほしい、と頼んだけど、辞めるなら5月末だから、と切られ、ボーナス無し」(原文ママ)と述べ、有給休暇の申請を断られ、退職日を5月末と強要されたことを示唆している。これについてもカネカは「元社員から5月7日に、退職日を5月31日とする退職願が提出され、そのとおり退職されております。当社が退職を強制したり、退職日を指定したという事実は一切ございません」と否定した。
“対応に問題なし”と結論づけたカネカに対し、批判は収まるどころかますます過熱している。「育休開けに突然内示を受けたら混乱することぐらい、想像できるはず。言い訳にすらなっていない」「今回問われているのは合法・違法の話ではなく、社員をどのように扱うかという企業姿勢です」と厳しい意見が続出している。
カネカの対応は、本当に“問題なし”といえるのか、弁護士法人ALG&Associates執行役員の山岸純弁護士に解説してもらった。