「みんながカメラマン」開設の趣旨は、事故や事件などが起きた際に、偶然その場に居合わせた視聴者が撮影したスクープ映像やハプニング映像を、ニュース番組に生かそうというところにあり、「あなたが撮影したニュース映像を、ぜひテレビ朝日に送ってください」と呼びかけていた。
インターネットを使ってスクープ映像を入手しやすくする狙いで、視聴者にとっても気軽に自身が撮影した映像をテレビに乗せることができる仕組みであるが、サイトが開設された直後にネットを中心に利用規約がひどすぎると話題となった。問題とされた利用規約には、次のようなことが記載されていた。
・投稿作品はテレビ朝日が自由に編集・改変して番組で放映する。
・投稿者に対して謝礼などはなく、著作権はテレビ朝日に委譲する。
・投稿データの利用によって第三者の権利を侵害した場合の賠償責任は、投稿者の責任と費用において解決する。
・投稿データの利用によって投稿者に損害が生じてもテレビ朝日は一切の責任を負わない。
・投稿データの利用によって第三者の権利を侵害しテレビ朝日が損害を被った場合、投稿者は賠償責任を負う。
こうした規約に対し、「権利だけはテレビ朝日が取り、責任は投稿者に押し付けている」などと批判が続出し、同社は閉鎖せざるを得ない状況に追い込まれた。同社広報部は「一部に誤解を招く表現があった。規約の改訂が終わり次第、サイトを再開する」とコメントを発表している。
その後ネット上では、「『誤解を招く表現』ではなく、根本的に間違っている」などと、さらに批判の声が上がっている。
●フジテレビも投稿者に損害賠償請求を明示
これに対し、ネット契約などに詳しい大学法学部教授、弁護士、行政書士に意見を聞いてみると、「規約の内容自体は違法ではないが、投稿者側への配慮を欠いているため批判されている」と、一致した見解を示した。
ちなみに、他の首都圏キー局の動画投稿サイトの利用規約を調べてみると、「第三者の権利を侵害する恐れがある動画は投稿しないように」との前置きがあり、同時に「第三者が写っている場合や第三者の所有地内で撮影した場合は、権利者の了承を得ること」を投稿の条件として挙げている。事前にこのような注意書きをしてあることで、問題が起きた場合は投稿者の責任を追及される可能性は残っている。
多くの場合、損害賠償責任については言及していないが、フジテレビはテレビ朝日と同様に「第三者との間に何らかの紛争が生じた場合、投稿者が投稿者の費用と責任において解決する」と投稿者に損害賠償責任を求めることを明示している。
前述の弁護士は「謝礼等がない、著作権を主張しない、という点は特に問題にならないが、損害賠償を一般人に求めるのは不適切」だという。「なぜならば、第三者の権利を侵害するかどうかは、放送するテレビ局が判断するべき問題で、それこそが放送倫理の根幹のはず」と責任逃れをするテレビ局の姿勢を批判している。
とはいえ、スマートフォンの普及によって、いつでもどこでも気軽に動画を撮影できるようになり、その動画をネットに上げれば世界中に広まる時代においては、撮影・投稿をする側にも一定の倫理観は必要であろう。
(文=平沼健/ジャーナリスト)