取締役会に食い潰される朝日新聞の「病巣」 ジャーナリズムよりも「己の利益」優先
朝日は株式会社であるため一定の利益を追求しなければならないと同時に、普通の会社とは少し違って利益よりも公益を意識しなければならない「言論機関」という側面がある。この両面から見ても、現在の役員陣は「失格」といえるだろう。
利益を求める株式会社としては、今回の一連の対応が部数や広告出稿の減少を招き、収益を落とす行為として役員にはその結果責任がある。朝日は非上場企業であり、村山家や上野家といった社主家が多くの株式を保有しているが、上場企業であるテレビ朝日ホールディングスも主要株主である。企業価値が毀損しかけている朝日への投資はテレビ朝日の株価に影響するリスクもあり、テレビ朝日の株主からその株式保有について疑問の声が出ても不思議ではない。
かつての雪印乳業や三菱自動車の場合、トラブルや隠蔽などが外部からの指摘によって次々に明らかになったが、その主な要因は、経営トップ以下役員陣が自社内で何が起こっているのかを完全に把握することができず、対応がすべてにおいて後手に回ったからだ。今回の朝日も両社のケースと非常に似ている。要は、雪印と三菱自動車の両社はともに「自浄能力」がなかったわけだが、朝日も今の対応を見ている限り同様で、本質的に読者をなめていると思う。
●記者会見で、お粗末さ露呈
9月11日、朝日の木村伊量社長が記者会見し、「吉田調書」報道を取り消して謝罪したが、翌日の同紙面には「誤報」という文字はまったく見当たらず、「読者に間違った印象を与えた」と表現していた。印象という意味は、イメージと捉えることもでき、「間違い」とは断言していない。非常に不思議な表現である。「吉田調書」報道についてさらに言うと、何をもって「間違った印象を与えた」と判断したのか、そのプロセスを詳しく説明しないと一般読者にはわかりづらい。そういう点でも読者をなめている。
また、記者会見では外部から誤報と指摘されている一連の問題が、記者ら関係者の個人的資質によるものなのか、企業風土などに起因する組織マネジメントの問題なのかも一切説明されなかった。こうしたことなどからみて、木村社長は現場で何が起きているのかを把握していないまま記者会見に臨んだ可能性が高い。事実、複数の関係筋によると、記者会見で配った資料は会見前ぎりぎりに完成し、文言をめぐっては担当部署と資料を作成した編成局長室との間で押し問答があったという。まさに「泥縄会見」なのである。もし、事実を把握していてあの程度の記者会見の内容ならば、木村社長自身がこの期に及んで様々なことを隠蔽しているのではないか。