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安倍首相、消費増税めぐる財務省の政界工作を示唆 省益優先で不況下に緊縮財政の罪

文=田中秀臣/上武大学ビジネス情報学部教授
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 財務省にとってこのような要求は省益を長期的に損なうものと映る。なぜなら国債は将来返済しなくてはいけない「固定費」であるため、将来的な財務省の自由裁量の幅は、(将来の)好不況に関係なく「固定費」が増えれば増えるほど制約されると考えてしまう。したがって、現時点では経済が不安定であるにもかかわらず、財務省は国債発行に慎重になり、緊縮財政を志向してしまう。

 現在、アベノミクスの積極財政を反映して国債発行圧力は十分に大きく、財務省としては将来の裁量余地が極めて狭まったことになる。それに抗するためには、財務省は消費増税という「緊縮財政」を積極的に進めることがどうしても必要に思えたのだろう。税率を上げれば税収も増え、それだけ財務省の自由裁量の余地が拡大する。これが最も単純な財務省の行動動機だ。

 もちろんこのような財務省の見解は視野狭隘であり、国益ではなく「省益」にすぎない。十分な巡航速度に到達していないのに大規模な増税をすれば、経済は必ず失速する。税率を上げても十分な税収が手に入るかは不透明なはずだ。だが、そのような経済学の初歩的常識は、財務省には通用しないようだ。

●消費再増税にどう対処すべきか

 今回の消費再増税延期に伴い、その時の景気状況から増税可否を判断するという、いわゆる景気条項を外して、「18カ月後」の再増税を政府は確約している。これについて、政治が財務省に屈しており、経済環境悪化下で増税すれば経済は失速をするという指摘がされているが、財務省に屈しているかどうかは現時点では検証のしようがない。そのため、本稿では2年半後の消費再増税にどう対処すべきかを指摘するにとどめたい。

 ポイントは3点ある。ひとつは97年の消費増税時の所得減税のような「先行減税」もしくは「同時減税」を行うことである。規模としては、できるだけ消費増税と同額が望ましい。高橋洋一・嘉悦大学教授のように「全商品・軽減税率」という発想も基本的にはありだ。これは事実上の消費再増税のちゃぶ台返しになる。

 2つ目は、日本銀行のインフレ目標到達と雇用最大化をできるだけ早期に実現することだろう。日銀の公約の通りに来年末までに2%の物価目標がされれば、経済が巡航高度に乗る可能性がきわめて高い状況であり、かつその時点で再増税までまだ1年4カ月も余裕がある。目標達成のために日銀はさらなる追加緩和の姿勢も否定してはならない。来年任期切れを迎える日銀政策委員の2つのポストを積極的緩和論者(いわゆるハト派)で補充する必要が出てくる。

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