しかし、かねてから視聴率に対しては、テレビ界の一方的な評価指標にすぎないとの批判も多い。
そもそも視聴率とは、各テレビ番組を、それぞれの地区のテレビ所有世帯のうち、どのくらいの割合が視聴したかを表す推定値でしかない。ビデオリサーチ社が、モニター世帯から得られるデータを基にして算出している。ピープルメータ(PM)というシステムを用いて、1世帯8台までのテレビの世帯視聴率と個人視聴率を1分単位で測定する方法から、日記式のアンケートを用いて、5分ごとに個人視聴率を調査する方法まで行っている。モニターは全国27地区6600世帯だが、全国5195万世帯(2010年国勢調査)からみると、わずか0.01%のサンプルしか調査をしていないのだ。この程度の精度でしかないものに一喜一憂しているのが、テレビ業界なのである。
しかも、パソコンテレビは調査対象となっているようだが、録画視聴は対象外となっている。現在では録画設備を備えている家庭は大多数と見られ、録画視聴を対象に含まない調査方法はテレビ視聴全体を正確に反映できているとはいえない。
●多様化する視聴スタイル
筆者の自宅では、ケーブルテレビを利用して視聴している。14年10月総務省発表の「ケーブルテレビの現状」によると、ケーブルテレビに加入している世帯は全国で2874万件に上り、普及率は50%を超えているという。我が家のケーブルテレビの端末には、HDD(ハードディスクドライブ)録画機能がついているが、今では多くのケーブルテレビ事業者が、このような端末を契約者に貸与しているようだ。
このHDD録画機能の優れている点は、同時に2つ以上の番組の録画ができることだ。細かくチャンネルを変更して視聴していても、好みの番組はしっかり録画できるので、後から見直すことができる。また、時間差で番組の冒頭から見ることもできる。
大みそかの夜、小学生の愚息は『ワンピース』が放送されているのを知ると「録画したい」と言い出した。しかし、筆者と妻はじっくりと『NHK紅白歌合戦』を見たい。そこで、風呂から出た愚息に録画した『ワンピース』を時間差で見せ、愚息が就寝した後、大人はさらに時間差で『紅白歌合戦』を最初から最後まで楽しんだ。