激しく対立しているのは、塩崎恭久厚生労働相と世耕弘成官房副長官。130兆円に上る国民の年金資産を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の改革方針をめぐって、抜き差しならない関係になっているという。もともと2人は盟友だが、今ではお互い目も合わせない冷えた関係になっているらしい。
発端は世耕氏がGPIFの運用を仕切る新設の最高投資責任者(CIO)に、個人的に関係が深い水野弘道氏を送り込んだこと。CIOに権限を集中させて、水野氏に自由に運用させる体制を築こうとしたのである。
これに待ったをかけたのが、昨年9月に所管の厚労相に就任した塩崎氏。水野氏はプライベート・エクイティ(未公開株投資:PE)に投資する英ファンド・パートナーを務めていたとはいえ、巨額のポートフォリオを運用した経験がなく、どうみても不適格だとしたのだ。そのうえで、GPIFの組織のあり方、つまりガバナンス体制を見直す方針を打ち出し、CIOひとりでは運用方針を決められない合議制に移行しようとしたのである。
これに激怒したのが、世耕氏とその上司に当たる菅義偉官房長官だった。塩崎氏の改革方針にストップをかけたのである。世耕氏らが水野氏にこだわる理由は不明だが、「自らの息のかかった水野氏を送り込むことで、巨額年金資産の運用を意のままに操ろうとしているのは明らかだ」(政界筋)といわれている。
●メディアを利用しバッシング合戦
そうした対立の構図が月刊誌「FACTA」(ファクタ出版)に詳報されると、世耕氏の怒りは頂点に達したという。真相を暴いた記事は塩崎サイドがリークしたとみた世耕氏は、反撃に出た。懇意の週刊誌編集長を呼び、1時間半にわたって塩崎批判をまくし立て、「週刊文春」(2月26日号/文藝春秋)に記事『“お友達”塩崎恭久厚労相の大暴走』として掲載された。5ページに及び塩崎バッシングが展開され、内容はほとんど塩崎氏の人格攻撃に徹していた。
同僚である閣僚を、内閣の要の一翼を担う官房副長官自らが刺すという、前代未聞の内紛に発展したのである。
両者の勝敗が最終的にどう決着するのかは不透明だが、官邸で安倍首相のそばにいる世耕氏側に分があるという。130兆円の私物化計画という虎の尻尾を踏んでしまった塩崎氏は、次の内閣改造で更迭必至という見方が官邸内で広がっている。
(文=編集部)