図中の年金指数は「十分性」「持続性」「健全性」の3つのポイントで算出される。十分性はもらえる年金額は十分かどうか、持続性は人口推移や平均寿命のバランスとの関係で持続可能なものか、健全性は年金制度をうまく運用するための見直し機能や透明性が担保されているか、ということを意味する。ちなみに、このランキングには、中国やインドネシアのように国民皆年金ではない国も含まれている。例えば、中国の場合、加入義務のある被保険者は、都市部の被用者および自営業者である。よって、この結果を基に日本が中国やインドネシアよりも単純に下位にあるとはいえない。
しかし、仮にそうした国々を除いて、欧米先進諸国だけと比較してもなお、日本の年金制度は貧困であり、このランキングは参考資料として十分に意味がある。デンマークは、十分に積み立てられた年金とその給付水準が評価されて1位になっており、高福祉高負担で知られる北欧諸国が上位にランクされる傾向となっている。
14年度の結果を踏まえ、マーサージャパン年金コンサルティング部門シニア・アクチュアリーの塩田強氏は次のように語る。
「日本の場合、さまざまな項目の中で、総合評価への影響が大きい所得代替率の低さが、総合評価で下位となる要因の1つです。厚生労働省の『平成26年度財政検証』では、現状の制度を変更しない場合、少子高齢化の進展に伴う所得代替率の低下が不可避であることを示唆する結果となっており、将来的に総合評価が改善することは難しいかもしれません」
所得代替率とは、年金給付額が現役世代の平均収入の何割であるかを示す指標だ。経済協力開発機構(OECD)は、各国の年金による所得代替率を公表しており、日本の「義務加入年金の所得代替率」は35.6%となっている。これはOECD諸国の平均54.0%と比較して、かなり低い水準だ。民主党政権下の年金記録回復委員会で委員を務めた社会保険労務士・廣瀬幸一氏は次のように語る。
「自民党政権は医療や介護には注力していますが、仕組みが難しく国民には良い話とならない年金問題には熱心でなく、厚労省年金局まかせなので、年金改革はしないでしょう。公的年金が不十分なのですから、個人年金に入っている人を税金面で優遇するとか、控除額を大きくするとか、政策的に何らかのサポートをすれば良いと思います」
●年金支給開始年齢、さらに引き上げ不可避か
国立社会保障・人口問題研究所の試算によれば、25年後の40年、65歳以上の人口は3900万人へと増えるが、一方、労働人口は5800万人に減少するとされている。つまり、2人以下の労働者が1人の年金受給者を支える状況に突入するわけだ。