ある大手ワインメーカーのトップは、「ひょっとしたら今年にも、そうした事態が起きるかもしれない」と話す。直近の数字、末端市場の動きなどを、このトップは当然把握しているはずだから、かなりの確率で逆転するとみての発言であるに違いない。すでに昨年には、単月ではチリ産が何度かトップに立っているという事実もある。
まず前提となる、輸入量の推移を見てみよう(財務省の統計からメルシャンが推計)。10年前の2005年、フランス産の輸入数量は5万3762キロリットル、シェアは45.5%だった。対してチリ産は7506キロリットル、シェア6.4%で、イタリア産、アメリカ産の後塵を拝していた。しかし07年以降、少ない年で前年比13%、多い年には30%余りの伸びを記録し、07年にはアメリカ、13年には伝統的ワイン輸出国イタリアをも抜いて2位に躍り出た。そして14年には、フランス産5万2991キロリットルに対しチリ産は4万3695キロリットル、シェアで見るとフランス産29.4%に対してチリ産24.3%まで肉薄してきているのである。
では今後一両年で本当に数字上、逆転は可能なのだろうか。簡単な計算をしてみたい。13~14年の2年間に限ると、フランス産の前年度比は単純平均で93.95%、つまり6.05%のマイナス。対してチリ産は117.65%、つまり17.65%のプラスである。両国からの輸入ワインの増減の傾向値が15年もほぼ同様と仮定するならば、どうなるであろうか。フランス産の輸入量は4万9785キロリットルまで落ち、チリ産は5万1407キロリットルと初めて5万キロリットルの大台に乗せて逆転必至となる。計算上では、17%まで伸びなくとも14%弱の伸び率で逆転するのだ。
各社の取扱量も増加
「フロンテラ」をはじめ、「カッシェロ・デル・ディアブロ」「サンライズ」など、チリ産の有力銘柄を扱うメルシャン関係者は、「14年の数字を見ると、これらの主要ブランドの多くが10%台の伸び率を記録しており、今年もまた順調な伸びを示している」と語る。