我が国の少子高齢化は急速だ。すでに人口は減少し始めており、2015年の国勢調査では、外国人を含む総人口は1億2709万人で、前回の10年度調査と比べ、96万2607人(0.8%)減った。
2014年には日本創成会議・人口減少問題検討分科会が「消滅可能性」のある896自治体の名前を公表し話題となった。豊島区など東京の都心部でも、10年からの30年間に20~39才の女性人口は半減するという。
国土交通省は「コンパクトシティ・プラス・ネットワーク」を重点施策に挙げている。同省によれば、その目的は「地域の活力を維持するとともに、医療・福祉・商業等の生活機能を確保し、高齢者が安心して暮らせるよう、地域公共交通と連携し、コンパクトなまちづくりを進める」ことらしい。富山市や青森市が代表例として、取り上げられることが多い。
もちろん、このような都市は例外だ。多くはこんなにうまくいくはずがない。東北地方のある市長は「絵に描いた餅」と批判し、「我々ができるのは、いかにソフトランディングさせるかだ」と言う。
では、どのような経過をたどって、地方都市は消滅していくのだろう。
3月、私は『病院は東京から破綻する 医師が「ゼロ」になる日』(朝日新聞出版)という書籍を上梓した。このなかで、首都圏の総合病院が経営危機に瀕していることを紹介した。有名な聖路加国際病院や亀田総合病院ですら、経営に問題を抱えている。過剰な固定投資など放漫経営を続けてきたところに、診療報酬削減が効いた。
地方都市の病院が破綻するパターンは、首都圏とはまったく違う。一部の地方都市では、若者だけでなく、病院にとっての「顧客」である高齢者の数が減少し始めているのだ。
医療ガバナンス研究所の研究員である樋口朝霞氏は、住民基本台帳の年齢別人口を用いて2010年と16年の人口を比較した。それによれば、全国の1,742の市町村(東京23区を含む)のうち、368で75才以上の人口が減少していた。124の自治体の減少率は5%を超える。多くは村や町だが、北海道歌志内市(10%)、兵庫県養父市、岩手県陸前高田市(いずれも7%)、鹿児島県南さつま市、同垂水市(いずれも6%)など都市も含まれる。
一方、この期間に21の都市で、75才以上の人口が50%以上増加した。内訳は埼玉県14、千葉県3、愛知県2、大阪府・神奈川県1だ。最高は愛知県西尾市の99%である。これは高度成長期に団塊世代が地方から都市圏に移動した名残だ。さらに最近は商業施設や医療機関などが近くにあり、利便性が高い都市部に移動する高齢者が増えている。
この結果、都市部ではいくら病院をつくっても足りないのに対し、地方都市では患者が減少し、病院では閑古鳥が鳴く。