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うつ病予防、最大のポイントは「自分の思考パターン」を知ること

取材・文=里中高志
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<自分の性格>を把握していますか? 思考・性格パターンを知って「うつ病」を防ぐの画像1上司から怒られたときに自分を客観的に眺めてみると気持ちにも変化が(depositphotos.com)

うつ病の予防」をテーマにした本連載では、睡眠と運動、栄養といった側面をからアプローチしてきた。

 それらを踏まえた上で、国立精神・神経医療研究センターの西大輔医師は、「いちばん大切なのは、自分の思考パターンを知ること」と話す。今回は、「思考」からうつ病の予防法にアプローチする。

自分のパターンに気付けているかどうか?

「うつ病の原因については、脳内の神経伝達物質をはじめ諸説ありますが、私は“自分のパターン”に気づくことが、予防のうえで最大のポイントだと考えています。調子を崩した時、自分のパターンに気づいて自分を客観視できると、受け止め方はずいぶん変わります。

 たとえば、電車が遅れるたびに、すごくイライラして腹が立つ人がいたとします。その人は、電車が遅れたのが悪い、自分が腹を立てるのは当たり前のことだと思っています。でも、もし『当たり前』であれば、電車を待っている他の人たちも同じように腹を立てているはずです。

 逆に言えば、電車が遅れた時だけ腹を立てて、それ以外の状況で腹を立てない人というのは、まずいませんよね。つまり『電車の遅れ』という出来事がきっかけで、『腹を立てやすい』というその人の傾向が表に出てきているわけです。

 つまり、『電車のせい』ではなくて『自分には腹を立てやすいパターンがある』ということに気づくことが大切です。しかし、ここで『腹を立てやすい自分はダメな人間だ』などと思う必要はありません。おそらく、昔のある時期に、腹を立てたり怒りを見せたりすることが問題解決の役に立ったことがあるから、そのパターンが残っているのでしょう。

 また、強い感情を感じたときの身体の反応にも、人によってパターンがあります。たとえば、イライラしたときに呼吸が浅くなり首や肩に力が入ってしまうという人がいます。そういう場合、呼吸の浅さや首・肩のこりから、自分のイライラに気づくこともできます。そして気づけば、それだけで自然に気持ちにも変化が生まれます。

 うつ病になってから、自分の内面を見つめるのは簡単ではありません。うつ病になる前に、自分のパターンを客観視できるようになっておくと、うつ病になりにくくなると考えています」

元気な今だからこそ始めよう

 うつ病を予防したり悪化させたりしないためには、うつの予兆が表れたときに、早めに察知することが大切だ。

 うつの予兆としては、不眠や頭痛などの身体の不調、疲れやすさ、無力感や不安、イライラ、焦り、自己否定感などがある。新聞や本の内容が頭に入らないという状態も、うつによる集中力の低下から起きているかもしれない。

「自分のパターンに気づくことで役立つのは、うつの予防だけではありません。気持ちに余裕が生まれますし、これまでは知らなかった可能性が見えてくることもあります。そして、これまでお話してきた睡眠や身体に目を向けること、栄養などは、すべてこの気づきにつながってくるのです」(同)

 まだうつになっていない今だからこそ、始められるこれらの予防策。セルフケアとして、試してみる価値があるはずだ。
(取材・文=里中高志)

西大輔(にし・だいすけ)
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神保健計画研究部システム開発研究室長。2000年、九州大学医学部卒。国立病院機構災害医療センター精神科科長を経て2012年より現職。2016年より東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻精神保健政策学分野連携講座准教授を併任。著書に『うつ病にならない鉄則』(マガジンハウス)がある。専門:精神保健学、うつ病・PTSDの予防、栄養精神医学、産業精神保健、レジリエンス。

里中高志(さとなか・たかし)
精神保健福祉士。フリージャーナリスト。1977年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。大正大学大学院宗教学専攻修了。精神保健福祉ジャーナリストとして『サイゾー』『新潮45』などで執筆。メンタルヘルスと宗教を得意分野とする。著書に精神障害者の就労の現状をルポした『精神障害者枠で働く』(中央法規出版)がある。

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ヘルスプレス編集部

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