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小谷寿美子「薬剤師が教える薬のホント」

薬剤師が解熱鎮痛薬として「バファリンEX」より「ロキソニンS」を薦める理由

文=小谷寿美子/薬剤師
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薬剤師が解熱鎮痛薬として「バファリンEX」より「ロキソニンS」を薦める理由の画像1
「ロキソニンS」(第一三共ヘルスケアのHPより)

同じ名前のようで違う薬

バファリンください」

 これほどドラッグストアの薬剤師泣かせの薬はありません。店頭にはたくさんの薬が並んでいますが、バファリンひとつとっても実は多くの種類があります。PMDA(医薬品医療機器総合機構)のサイトの一般用医薬品情報検索で「バファリン」と検索をかけると15件の薬がヒットします。15件のうち8件は子ども向けの薬で、大人向けは7件です。わたしたち薬剤師にとってバファリンは15種類あるので、とても混乱してしまいます。こういう時はお客さまを解熱鎮痛薬売り場に案内して、現物の薬を見ながら選んでもらうようにしています。

 大人が使えるバファリンとしては「バファリンA」「バファリンEX」「バファリンプレミアム」「バファリンプレミアムDX」「バファリンライト」「バファリンルナJ」「バファリンルナi」があり、メインとなる解熱鎮痛成分が違います。「A」と「ライト」はアセチルサリチル酸(アスピリン)を使用しています。「EX」はロキソプロフェン、「プレミアム」と「プレミアムDX」はイブプロフェンとアセトアミノフェンの2種類を使用しています。「ルナJ」はアセトアミノフェンですが、「ルナi」はイブプロフェンとアセトアミノフェンの合剤です。メインの成分が違うとなると有効性や安全性に対する注意事項が大幅に変わってきます。

 たいていの方は、昔から発売されている「バファリンA」で問題ないのですが、そうではない方もいるので詳細な聞き取りが必要になります。また、市販薬に対してほぼ知識のない医師に対して「バファリン飲んでいます」と言ったところで何も伝わりません。こういうときは外箱か添付文書を見せるのが手っ取り早いです。現物を見せればわかってもらえると思って中身の薬だけ見せても、成分の名前が書いてあるわけではないので医師はわかりません。言葉のみで伝える時は「アセチルサリチル酸配合のバファリン」「ロキソプロフェン配合のバファリン」と言うようにしましょう。

バファリン以外にもあります

「ノーシンください」。これも混乱します。PMDAのサイトに「ノーシン」と入力して検索をかけると13件がヒットします。痛みによく効く「ACE処方」であるアセトアミノフェン、無水カフェイン、エテンザミド配合の「ノーシン(散剤)」であることが多いのですが、「ホワイト」や「ピュア」もあるので現場は大混乱です。総合感冒薬である「パブロン」や「ルル」にもたくさんの種類があります。そのため、一つひとつ丁寧に調べていく必要があります。

添付文書の「相談すること」の意味

 みなさんがあまり読まない添付文書ですが、「相談すること」という記載があります。これは「医師または歯科医師の治療を受けている人」は相談してくださいという意味です。実はかつてあった医療用医薬品である「バファリン配合錠A330」と市販薬の「バファリンA」は同じ成分でしたが、医師は安くて使いにくい薬は処方しないという傾向があります。そのため、このバファリン配合錠A330も2021年4月に販売中止してしまいました。医療用医薬品であるバファリン配合錠A330の添付文書には併用注意の項目が25個あり、使いにくいのです。

 その一つが糖尿病薬との併用注意に関する項目です。アセチルサリチル酸そのものが血糖降下作用をもっています。その上で、血液中でタンパク質に結合して薬が全身に運ばれるのですが、アセチルサリチル酸の結合力が高いため他の薬を追い出してしまうという性質があります。追い出された薬がいつも以上に薬効を発揮してしまうことがあります。たとえば血糖降下作用のある「スルホニル尿素系」の薬ではこの現象が起き、さらに血糖降下作用を発揮してしまいます。

 併用注意の多い薬は、売る側の薬剤師としてもリスクが大きいです。解熱鎮痛薬としては、患者さんが医師へ説明して伝わりやすいという観点からも、「ロキソニンS」が使える方にはこちらを第一優先に紹介します。「ロキソニンS」は医療用医薬品と同じ成分であることから、医師に「ロキソニンを飲んでいます」と伝えれば通じます。「バファリンEX」にも「ロキソニンS」と同じロキソプロフェンが含まれていますが、伝わりやすさを考えると「ロキソニンS」の圧勝です。

(文=小谷寿美子/薬剤師)

小谷寿美子/薬剤師、NRサプリメントアドバイザー

小谷寿美子/薬剤師、NRサプリメントアドバイザー

薬剤師。NRサプリメントアドバイザー。薬局界のセカンドオピニオン。明治薬科大学を505人いる学生のなか5位で卒業。薬剤師国家試験を240点中224点という高得点で合格した。
市販薬も調剤も取り扱う、地域密着型の薬局チェーンに入社。社歴は10年以上。
入社1年目にして、市販薬販売コンクールで1位。管理薬剤師として配属された店舗では半年で売り上げを2倍に上げた実績がある。

市販薬、調剤のみならずサプリメントにも詳しい。薬やサプリメントの効かない飲み方、あぶない自己判断に日々、心を痛め、正しい薬の飲み方、飲み合わせを啓蒙中。

Twitter:@kotanisumiko

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