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大幸薬品、クレベリン「不当表示」で課徴金6億円…大ヒットから一転、赤字転落の元凶に

文=佐藤勇馬
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※画像:「大幸薬品株式会社」公式サイトより/クレベリン

 大幸薬品が「空間に浮遊するウイルス・菌を除去」などと表示して「クレベリン」シリーズを販売していたことに対して、消費者庁は11日、景品表示法に違反(優良誤認)するとして6億744万円の課徴金納付命令を出した。同社の資料で密閉された空間でのデータなどは示されたものの、一般的な環境での効果を裏付ける合理的な根拠はなかったという。課徴金額としては、加熱式たばこの不当表示で納付を命じられたフィリップモリスジャパンの5億5274万円を超えて過去最高となった。

 対象となった「クレベリン」シリーズの6商品は、室内に置いたり、噴霧したりすることで、二酸化塩素の作用によって「空間に浮遊するウイルスや菌を除去」とうたっていた。「空間除菌」系の商品は他社も販売していたが、その中でも「クレベリン」は別格の人気でコロナ禍に売り上げを伸ばし、大幸薬品の売り上げの約8割を占めた。2020年12月期には、品薄解消のために約23億円をかけて大阪府茨木市に工場を建設し、置き型タイプの生産能力を約10倍に引き上げた。

 これに対して、当時からネット上では複数の識者や現役医師らの間で「ウイルス感染を防ぐような効果があると思えない」「仮に短時間で空間のウイルスを不活性化できるほどの濃度の化学物質を噴霧したら人体に有害では」などと疑問の声が噴出していた。そうした認識が広まったことに加え、厚生労働省や世界保健機関(WHO)が空間除菌系の商品に否定的な見解を示したことなどで「クレベリン」シリーズの需要は急減し、大幸薬品は過剰在庫を抱えることになった。

 さらに、昨年1月に消費者庁が「クレベリン」シリーズについて、景品表示法に基づく措置命令を出したことで返品が増加。当初、大幸薬品は措置命令に対して「誠に遺憾と受け止めており、速やかに必要な法的措置を講じてまいります」として徹底抗戦の構えを見せていたが、商品の売り上げが低迷したことで法廷闘争の意味がなくなり、昨年5月に「景品表示法に違反するものでした」と認めて“白旗”を上げた。

 今回の課徴金納付命令についても、同社は「お客様をはじめとする関係者の皆様に多大なご迷惑とご心配をおかけしましたことを、改めまして深くお詫び申し上げます」「景品表示法に関する考え方につきまして、役員・従業員への周知徹底、広告表示等審査方針の改訂も含めた広告審査体制強化を行い、再発防止に努めております」などと全面的に謝罪している。「クレベリン」シリーズは、景品表示法に違反しない表示に変えて販売を再開しているという。

 「クレベリン」は、大幸薬品にとってラッパのマークで知られる「正露丸」を超える大ヒット商品となっていた。それだけに一連の騒動や需要急落、返品が相次いだことによるダメージはあまりに大きく、2021年12月期の連結決算では純損益が約95億円、2022年12月期連結決算は純損益が約48億円で、2期連続の赤字となった。

 大幸薬品は「正露丸」の販売などで消費者からの信頼を堅実に積み上げてきた企業だ。2005年に販売を開始した「クレベリン」をはじめとする感染管理事業は会社を大きく成長させたが、コロナ禍によって想定以上の爆発的な需要が生まれたことが、会社の持ち味だった「堅実さ」を失わせてしまったのかもしれない。

 今後、同社が消費者からの信頼を取り戻し、業績を回復させていくことができるのか注目だ。

佐藤勇馬/フリーライター

佐藤勇馬/フリーライター

SNSや動画サイト、芸能、時事問題、事件など幅広いジャンルを手がけるフリーライター。雑誌へのレギュラー執筆から始まり、活動歴は15年以上にわたる。

Twitter:@rollingcradle

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