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大江英樹「おとなのマネー学・ライフ学」

節約しても決してお金は貯まらない…無駄な保険やスマホ等の「固定費」削減で大きな効果

文=大江英樹/経済コラムニスト

 しかしながら、企業が本格的にコストを下げるための構造改革をしようと思うと、その方法はたった2つしかありません。一つは製造業の場合、「製造原価を下げること」そしてもう一つは「業務プロセスの効率化」です。人員削減などもこうした施策の結果として出てくる方法論の一つにすぎません。ところが、この2つを実行するためには時間もかかりますし、自社のみならず取引先との交渉なども必要になってきますから、すぐに実行することはできません。そこで、わかりやすい3Kが登場してくるのです。さらにもっとバカバカしいのは、「コピーで裏紙を使え」とか、挙げ句は「トイレットペーパーを二重から一重にしろ」といった類いの指示です。こんなことではたいして経費削減の効果が上がるとはとても思えません。社員の気持ちを引き締めたり、危機感を植え付けたりするという意味においては一定の効果は見込まれるでしょうが、実効性はほとんどないと考えるべきでしょう。

 家計における節約というのも、せいぜいそんなものが多いのです。一つひとつの項目について、「これは本当に必要なものかどうか」をチェックするのは案外面倒なものです。そこで思いつく簡単な節約法に向かいかねないということになります。

 でも、ときどき思い出したように消し忘れた電気を消して回るよりも、無駄な保険やローンをやめて、その分を貯蓄や投資に回して長期に積み立てていくほうがはるかにお金は増えます。それに、欲しいものや必要なものまで「節約」してしまうとストレスがたまるということになりかねません。ちょうど無意味なダイエットをしても長続きせず、その後にリバウンドして元に戻ってしまうようなものです。

 ところが、保険をやめても、あるいはあまり使っていないクラブの会費をやめても生活感覚にはほとんど変わりはありません。つまり、無理をしている感がほとんどないのです。したがって最初に無駄な項目を検討してチェックする作業は面倒ですが、一度決めてやってしまえば驚くほど簡単に続けることができます。保険でいえば、公的な保障でかなりの部分がカバーされるということを知っておくべきだし、新聞や雑誌でも今の時代ならネットによって無料で見ることのできる記事がたくさんあります。「“我慢する”節約」はそろそろやめにして、「“意識していない”無駄」を見つけてなくしてしまうほうに力を入れるべきです。

 普段はなかなか面倒でできないことでも、もうすぐ年末年始の休みがやってきます。今年の年末はそうした無駄のチェックから始めてみては、いかがでしょうか。
(文=大江英樹/経済コラムニスト)

大江英樹/経済コラムニスト

大江英樹/経済コラムニスト

1952年、大阪府生まれ。野村證券で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事した後、2012年にオフィス・リベルタス設立。日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員。資産運用やライフプラニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行っている。『定年楽園』(きんざい)『その損の9割は避けられる』(三笠書房)『投資賢者の心理学』(日本経済新聞出版社)など著書多数。
株式会社オフィス・リベルタス

Twitter:@officelibertas

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