先進医療とは、厚生労働大臣が定める高度な医療技術を用いた療養を指し、平成26年8月1日現在で98種類の先進医療が存在する。最新の医療技術は、常に大学病院や研究機関などにおいて研究・開発が行われており、多くの治療法や未承認薬がある。
通常、健康保険の対象とはならない治療法や未承認薬を使用すると、健康保険の対象となる治療部分も含めて全額自己負担になってしまう。いわゆる「混合診療の禁止」だ。これは、保険で認められている治療方法と、保険で認められていない治療方法とを併せて行った場合、両方とも健康保険の適用を受けられないことを意味している。
しかし、先進医療は例外だ。保険診療との併用が認められているので、あくまでも先進医療にかかる費用だけが全額自己負担となり、付随する費用は健康保険を適用することが可能となっている。自由診療とは異なり、先進医療は受けやすい工夫がなされているのだ。
厚生労働省の平成25年度(平成24年7月1日~平成25年6月30日)時点で実施された先進医療の実績報告をみると、1段目の重粒子線治療の技術料は約303万円。2段目の陽子線治療をみると、約258万円かかる。陽子線治療や重粒子線治療はがん治療のうち、代表的な先進医療だといえるだろう。
最近では、この先進医療を武器に保険の営業を展開しているケースをよく耳にする。「現在加入している医療保険には、先進医療の保障が付いていますか? 弊社には保障が付いた良い商品があります」といった具合だ。このような商品を“ドアノック商品”という。いわば保険販売のきっかけをつかむ商品を指している。
先進医療といっても、1~2000万円程度まで千差万別。本当に高額な先進医療に備えたいと考えているのであれば、先進医療がセットされている保険に加入するとよいだろう。
ところで、先進医療はどれほど活用されているのだろうか?
厚生労働省によると、平成25年度における先進医療にかかった費用の総額は、約132億9000万円。すなわち、日本人1人当たりの先進医療費用は、年間約105円となる。
先進医療特約は、医療保険やがん保険にあらかじめセットされているケースが多く、保険料は1カ月100円ほどに設定している保険会社が一般的だ。年間1200円の保険料収入に対し、保険金の支払いが105円でるならば、1095円が保険会社の儲けとみなすことができる。単純に考えて、100万件の先進医療特約を販売すれば、1年間に10億9500万円の利益となる。
とはいえ、平成24年度における先進医療にかかった費用の総額は100億円。1年間で約33億円増えている。国民1人当たり26円の増加だ。先進医療の知名度の広がりを考慮すると、これから先も費用が増える可能性はあるだろう。
ケースによって違いがあるので一概には述べられないが、先進医療保障がセットされているという理由だけで、わざわざ新しい保険に加入する必要はない。もし今、保険への加入を検討しているのであれば、先進医療特約付きの保険を選んでもいい、という程度だろう。ちなみに、先進医療特約には更新型と全期型が存在する。更新型は更新のつど保険料が変更されるので注意が必要だ。
なお、A保険の先進医療に加入しており、同時にB保険の先進医療にも加入している場合、ダブルで先進医療保険金が支払われることを追記しておく。
(文=横川由理/ファイナンシャルプランナー)