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江川紹子の「事件ウオッチ」第140回

江川紹子が抱える「桜を見る会」をめぐる憂鬱…繰り返される不明朗な記録廃棄、深まる疑惑

文=江川紹子/ジャーナリスト
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 ただし、首相枠、官邸幹部枠がそれぞれ1000人という点については、25日の参院行政監視委員会で田村議員が疑問を投げかけた。田村議員が入手した、招待状の封入・発送を外部委託した際の「仕様書」によれば、2014年は「総理・長官等推薦者」が3400人、「与党推薦者」が2900人だった。「14年と19年で自民党枠は倍加しているのに、首相枠は減るということがあるのか。『首相枠1000人』は過少な数字ではないか」と田村議員は追及した。

 これに、政府側は答弁できなかった。記者会見で問われた菅官房長官も「招待者名簿をすでに廃棄しているため、確認できていない」と述べるに留まった。

 さらに、反社会的勢力が参加した疑惑や、多くの被害者を出したマルチ商法関係者が招かれた問題が指摘されているが、これも名簿で確認することはできずにいる。

 政府の説明によれば、招待者名簿を廃棄したのは5月9日の午後。この日の昼、宮本議員が、13日の決算行政監視委員会での質問のために、内閣官房と内閣府に対して、招待者数や予算額・支出額の推移、招待者の選考基準などをファクスで資料請求した直後だった。偶然で済ますには、タイミングが合いすぎている。

 内閣府は、「保存期間1年未満の文書であり、会の終了をもって遅滞なく廃棄する」と説明したが、4月13日に行われた「桜を見る会」の後、廃棄まで1カ月近くかかったことについては、「各局の大型シュレッダーの使用が重なり、予約待ちで連休明けになった」と釈明。4月22日に予約し、十数箱分を処分するため作業時間は約2時間を見込んでいた、という。

 しかし、800枚程度の紙であれば、何も2週間も大型シュレッダーの予約を待たなくても、職場にある通常のシュレッダーで「遅滞なく廃棄」できるのではないか。特に、急いで処分するつもりもなく放置していたところに、議員からの照会があったので、慌てて処分予定の文書の山に加えて一緒に廃棄した、という可能性もある。

 廃棄処分の根拠として、菅官房長官は、内閣府人事課の内規を挙げ、招待者名簿の保存期間は1年未満というルールに従った、と説明する。しかし、内規でこのルールを明確にしたのは10月28日だ。実はその3日前の25日、田村議員が「桜を見る会」の名簿などについて内閣府に問い合わせをしている。28日には担当者が田村議員の元を訪ねて説明を行った。

 国会で追及された際に廃棄を正当化するため、後付けでルールを変更した可能性を否定できないのではないか。

 NPO法人情報公開クリアリングハウスの三木由希子理事長によれば、この内規は人事課長の権限で変更できる。内規のルールに該当しない文書を1年未満に廃棄することも可能だが、その場合は「どのような類型の行政文書ファイル等についていつ廃棄したのかを記録し、当該期間終了後速やかに一括して公表するものとする」となっているが、そのような文書廃棄は公表されていない。

「名簿が1年未満の保存期間と明示されたのは2019年10月28日から。それ以前に1年未満で廃棄した根拠は不明確なのです」と三木理事長。

 肝腎の資料が、野党議員の問い合わせの直後に捨てられ、別の議員の問い合わせのすぐ後に、廃棄の根拠が明文化された。これを「たまたま」と強弁するのは無理ではないか。

 防衛省の南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報隠蔽や、森友・加計問題での公文書の改ざんなど、安倍政権ではとかく記録や公文書を巡る問題が多い。今回の名簿廃棄の不明朗さには、「またか」という思いを禁じ得ない。

 こうして経緯を見ていくと、最初は突っぱね、事実を突きつけられると、一部を認め、それでも肝腎なところは「文書がない」として検証不能にする、こういう政権トップの態度と、それに呼応した官僚の対応が、事態の収束を遅らせている、といわざるを得ない。

 もし、5月に野党議員から問題が提起された時点で、安倍首相が「少し調子に乗ってやり過ぎてしまいました。反省します」と素直に非を認めて謝罪し、必要に応じて資料を公開し、改善策を出していれば、問題はとっくに片付いていたのではないか。

 この件を「くだらない」と思い、「もっとほかに議論すべき問題があるはずだ」と考える向きは、ぜひ政府と与党に、さっさと事実に向き合い、電子データを探索・復元して提出し、ことの真相を明らかにして、議論を速やかに終わらせるよう働きかけてもらいたい。

(文=江川紹子/ジャーナリスト)

江川紹子/ジャーナリスト

江川紹子/ジャーナリスト

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。


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