後継者が育たないユニクロ=柳井正、人に恵まれ伸びしろで優るソフトバンク=孫正義
「当時、社員総勢2000人だったソフトバンクが、新卒を3000人採用することになり、私が外部コンサルとして総指揮を執ることになりました」
その時、青野氏はコンサルタント会社の役員を務めていました。
「プロジェクトの途中で、ソフトバンクの孫正義社長と話す機会がありました。2時間近く熱く語られ、最後に『オレのこの夢に乗れー!』と叫ばれたのです。私は思わず『乗った-!』と叫んでしまいました。後先のことは考えなかった、考えられませんでした」
大車輪で業容拡大を続けているソフトバンクは、世間では孫氏のワンマン会社のように受け止められることが多い。しかし実態としては、孫氏の周りにはそうそうたる一騎当千の幹部たちが集結しているようです。青野さんのほかにも宮川潤一氏、宮内謙氏、笠井和彦氏など、それぞれで大事業を率いていけるような経営者たちが孫氏を支えています。 また米カリフォルニア大学バークレー校卒ということもあり、孫氏は海外の経営者にも知己が多い。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が来日すると真っ先に訪問するのが孫氏ですし、ソフトバンクの社外取締役にもアリババCEOのユン・マー氏がいます。創業者スティーブ・ジョブズ亡き後にアップルCEOとなったティム・クック氏とも良好な関係を深めています。孫氏自身も海外における軸足づくりが重要と考えているようで、2013年には米シリコン・バレーに100億円を超えるといわれる、目を剥くような大豪邸を購入しました。
ユニクロなどを展開するファーストリテイリングCEOの柳井正氏は、社外役員としてソフトバンクの役員会に出席した時の印象を次のように述べています。
「ソフトバンクの役員会は活発ですよ。外から見ていると、ソフトバンクという会社は孫さんがひとりで全部決裁しているような印象がある。だが、実際の役員会はみんなが議論して、物事を決めている。ソフトバンクの役員会に出ていると、孫さんは人の意見に耳を傾ける経営者だと感じます」(『成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝』<レイ・クロックほか/プレジデント社>より)
●人が居着かないファストリ
柳井氏のこの発言は興味深い。というのは、柳井氏がそう感じるのは、「ファストリの役員会はそうではないのだろう」という推察につながるからです。孫氏がソフトバンクの社外取締役として柳井氏を招いているのに、柳井氏は孫氏に自社の社外取締役を依頼していません。柳井氏は「(日本電産社長の)永守(重信)さんと孫さんだけ。この二人だけが、僕が日本で尊敬する経営者だ」(「週刊東洋経済」<12年11月24日号/東洋経済新報社>より)とまで言っているのに、その孫氏の助言を自社に対しては正式のものとしては依頼していないのです。