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山田修「戦略的ビジネス論」(8月5日)

後継者が育たないユニクロ=柳井正、人に恵まれ伸びしろで優るソフトバンク=孫正義

文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役
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 柳井氏は結局、自分で熟慮して断行する、そういう自律型の経営者なのではないでしょうか。柳井氏の場合、その能力と性向が強いので、少なくとも経営上の意思決定においては他人の意見を聞く必要がない、と見ることができます。

 他者を必要としない経営者の場合、周りを固めるべき補佐的な経営幹部を必要としません。ですから、残念ながら後継者となる経営幹部が育ちもしません。自律的な経営幹部などは不要なのです。トップがすべて判断し、号令を下すからです。

「柳井さんは自分が経営者として優秀すぎるために、人を信じられない、人に任せられない、そして人を育てられないのではないでしょうか。02年に後任社長に据えた玉塚元一さん(今年5月、ローソン代表取締役に就任)を3年後に解任したのがその象徴です」

 これは「週刊ポスト」(4月11日号/小学館)に筆者が寄せたコメントですが、実を言うと玉塚さんが去った後の07年の頃、「玉塚さんの後に、特に同社の海外事業と海外M&Aを統括してくれないか」と、筆者はファストリに誘われました。旧知のヘッドハンターからの依頼だったのですが、柳井氏のようなタイプの創業経営者とはうまくやっていけないだろうと判断して、お会いしに行くことは断りました。

 ソフトバンクのOB経営者は、SBIホールディングスの北尾吉孝社長などのように今でも孫氏と親交を保っている人が多いように見受けられます。一方、ファストリの場合は、柳井氏に次ぐNo.2になるような、あるいはその候補たるべき人材が外に出た後、柳井氏と親交を続けているという話をあまり聞いたことはありません。

●伸びしろで勝るソフトバンク

 日本が誇る創業型の2大名経営者というべき孫氏と柳井氏の今後はどうなるでしょう。大きな要素は、やはり年齢でしょう。

 65歳となった柳井氏は以前から「65歳引退」を公言していましたが、続投することにしましたし、つい最近では「僕は一生引退できないのではないかと思う」とまで語り、自身が引き続き経営を主導して事業拡大を目指す意向も表明しています(3月28日付共同通信社インタビュー記事より)。

 ファストリについては、前述したように柳井氏は「孤高の名経営者」という立場です。逆に言えば、この「最高のCEO」に陰りが出た時、同グループの快進撃は止まるような構造になっています。そして、人間に老いは必ず来ます。以前は、「世襲は絶対やらない」と柳井氏は公言していましたが、共同通信記事では「グループ執行役員を務める長男一海氏と次男康治氏の将来の処遇に関して『会長や副会長みたいなことをしてもらったらと考えている』と説明した」と報じられています。正直、驚きの感想を持たざるを得ません。

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