ヤマダデンキが展開し、大きな注目を浴びていた積立預金のキャンペーンは、あまりの反響の大きさから、同社は中止すると発表した。満期時における破格のポイント還元を掲げ、元本を保証する積立預金で、SNSでは「新NISAではなくヤマダデンキの積立に注ぎ込むべき」といった投稿が相次ぎ、一部の利用者が大量に申請するなど、同社の想定を大幅に超える申し込みがあり、当初宣伝していた特典を確保することは困難と判断したようだ。なぜこれほどまでに大きな話題となったのか、専門家の見解を交えて追ってみる。
ヤマダデンキは11月28日までに、破格のポイント還元を謳う積立預金のキャンペーンを発表。SNSでは「詐欺レベル」などと大きな話題になり、申し込みが殺到。だが、翌29日にはアクセスが集中しすぎたため申し込みを制限、キャンペーンサイトは閲覧できない状態になった。
キャンペーンの内容は、ヤマダデンキの会員向け預金・振込サービス「ヤマダNEOBANK」で、自動積立預金サービス「ヤマダ積立預金」の積み立てを1年間継続すると、満期時に元金に加えて積立総額の10%をポイントで還元するというもの。現金ではなくヤマダデンキのポイントではあるものの、実質的な年利は18.5%に上ることから、「新NISAではなくヤマダデンキに注ぎ込むべき」との声が噴出。実際に大量の申請を行う客もおり、ヤマダデンキの想定をはるかに上回る申し込みがあったという。
そのため同社は12月2日、HP上にて「想定を遥かに上回るお客様からお申込みを頂き、また、一部の方からの大量のお申込みがあった事を受け、当初の目的を鑑み、誠に勝手ながら特典について中止することを決定させていただきました」と発表。すでに申し込みをしている客には個別に連絡をした上で、お詫びとして一人(一口座)につき3000ポイントを付与するという。
ヤマダデンキのイメージダウンにつながる恐れ
さらに、「特典について、事前の想定・準備において弊社の見通しが甘かったと認識しており、お客様のご期待を裏切る結果となりました事を重く受け止めております」と謝罪している。だが、金融ジャーナリストは、一方的な中止に疑問を投げる。
「そもそも、現金による利息ではないものの、一般的な積立ではありえないほどの高い利益還元を謳っていたことから、申し込みが殺到することは、ある程度の想像がつくのではないでしょうか。ましてや、ヤマダNEOBANKは住信SBIネット銀行を所属銀行とする銀行代理業者として提供する銀行サービスで、いわば金融商品です。ヤマダデンキと住信SBIネット銀行のコラボサービスであることから、信頼して投資をしようと考えてお客も多いはずなのに、一方的に特典を中止とする発表は、あまりにも顧客を軽んじています。
3000ポイントの付与もひどいですね。たとえば毎月5万円を積み立てれば、1年後には元金60万円に加えて6万ポイントがもらえると考えていたお客にしてみれば、3000ポイントでお茶を濁されたわけです。しかもヤマダデンキで買い物をするための“撒き餌”ぐらいにしかなりません。
しかも、通常の還元率が積立総額の5%、キャンペーン特典として5%を上乗せし、計10%をポイントで還元するという施策だったわけで、キャンペーン特典を中止したとしても、5%分の還元は維持すべきとの意見も多いですが、ヤマダデンキはその点について言及していません」
また、このキャンペーンに申し込むためにヤマダNEOBANKの口座を新規で開設した人たちからは、「口座を開設したのに申し込みに間に合わなかった」「個人情報だけ抜き取られたようなもの」など、不満の声が噴出している。
ヤマダデンキは、業界2位のエディオンの約2倍の売上高を誇る最大手だが、テレビの独占販売契約を結んでいた船井電機が10月に破産し、一定のダメージを受けることが想定される。そんななかで発生した積立預金の一方的な中止は、大きなイメージダウンにつながる恐れがある。実際にSNS上には「ヤマダはもう信用できない」「二度とヤマダで買い物しない」など怒りの声があふれている。失った信用を早期に取り戻す施策を打てるのか、注目される。
(文=Business Journal編集部)