昨今、利用者が急増しているといわれるジェルボール洗剤。粉末、液体に続く“第3の洗剤”として2014年に改札され、手間がかからずコスパも悪くないことから、徐々に広まりつつある。ジェルボールを発売する企業も増え、テレビCMも頻繁に流れているため、まだ使ったことがない人でも、どのような洗剤か、なんとなく知っているのではないだろうか。だが、ジェルボール利用者の増加に比例して、事故も急増しているという。そして消費者庁が警鐘を鳴らすに至った。ジェルボール洗剤のメリット、デメリット、危険性などについて、確認してみる。
ジェルボールは、ボール型をした洗濯用洗剤で、中に濃縮された液体洗剤が封入されている。「ジェルボール」以外に「ボール型洗剤」と表記するメーカーもある。最近では漂白剤や柔軟剤も入っているタイプもあり、洗濯時にたった一つ、洗濯機に放り込むだけという手軽さが売りだ。見た目も鮮やかで、フォルムも丸みを帯びてかわいらしいため、特に女性からの評判が良い。
見た目のかわいらしさ、計量がいらない手軽さ、詰め替えの手間がない便利さなどに加え、洗浄力や経済性も液体洗剤と遜色がないことから、利用者からは「良いことずくめ」と評判も良く、リピーターが多いという。
「フォルムはとても評判がいいですね。かわいい、という声が多く、『見た目がかわいいから買った』とおっしゃる方もいます。見た目だけでなく、コスパで比べてみても、実は液体洗剤と大きく変わりません。ただ、ジェルボールは洗濯物の材質などにもよりますが、6kgぐらいの量を想定しているので、それより洗濯物が多かったり少なかったりする場合には、液体洗剤を利用したほうがいいかと思います。
一定の洗濯物量を洗う場合には、計量が不要、柔軟剤も不要なので、普段あまり洗濯をしない方にも洗濯を任せやすいと思います。これから年末に向けて大掃除の時期に、旦那さんやお子さんに手伝ってもらいやすい、といった声も聞きます」(洗剤メーカー社員)
デメリットはないのだろうか。
「デメリットとしては、一定量の洗剤が封入されているため、量の調整ができないこと、漬け置き洗いができないことが挙げられます。本当に手軽で、家事の時短になるのでお勧めです」(同)
利用者増加に伴い、事故も増加
洗剤メーカー側としては良いことばかりなので、自信をもって推奨できる製品だという。一方で、事故が多発しているのは、なぜなのか。消費者庁の公式X(@caa_kodomo)では、次のように注意喚起している。
<【洗濯用パック型液体洗剤での事故に注意】 こどもが誤飲して嘔吐するなどの事故が発生しています
・手の届かない場所に保管
・使用後は密閉し置き場所へ
・詰め替えパックのまま使用しない
・洗濯機に入れたままにしない
などで事故防止
高齢者の誤飲事故等にも注意して>
実はジェルボールが発売され始めた当初から、消費者庁・国民生活センターには、ボール型洗剤に関連した、子どもの事故情報が医療機関から寄せられていたという。
事故の例として、次のように紹介されている。
「祖父母宅に帰省中、洗面所から物音がしたため保護者が様子を見ると、こどもが洗濯用パック型液体洗剤をかじっていた。救急搬送中、顔色が悪く4回嘔吐した。急性呼吸不全などがみられたため入院。人工呼吸管理等の処置が必要となった。保護者宅では液体洗剤を使っており、こどもがパック型のタイプを見たのは初めてだった。」(0歳8か月)
「洗濯機に入っていたパック型液体洗剤を、こどもが踏み台を使って取り出して自分で潰した。中の洗剤がこどもの左目に入り、洗眼したものの充血していて、目が開かないため病院を受診。なお、パック型液体洗剤は普段、こどもの手の届かない位置に置いていた。」(3歳)
さらに、こどものみならず高齢者が誤飲した事例も報告されている。
「認知症のある高齢者が、自宅の洗面所に置いてあった洗濯用パック型液体洗剤を1~2個食べてしまった。嘔吐と下痢が続き、病院に搬送された。洗剤による界面活性剤中毒から誤嚥性肺炎となり、入院し、その後人工呼吸管理が必要となった。」(70歳代)
洗剤メーカーも公式サイトなどで、子どもや認知症の方がいる家庭に向けて、注意を呼び掛けている。重要なポイントとしては、子どもや認知症の方が誤飲しないような場所に置くことと、万が一飲み込んだ場合は、大量に水を飲ませるなどの処置をして医師に相談することである。
小さい子どもがいる家庭では、誤飲防止のために子どもの手の届く範囲に、口に入れると危険な物は置かないように気を付けているだろう。しかし、帰省した際などには、意外なところに落とし穴が潜んでいる。年末年始に向けて、ご留意いただきたい。
(文=Business Journal編集部)