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ボトル入り洗剤の実質的な単価、実は詰め替え用より安い?当たり前の理由

文=Business Journal編集部、協力=西川立一/流通ジャーナリスト
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「gettyimages」より

 ある小売店で、衣類用洗剤「アタック 抗菌EX 部屋干し用」(花王)の容量2.5kgタイプのほうが1.8kgタイプより1グラム当たりの単価ベースで高い価格で販売されていることが話題となっている。さらに、値札には2.5kgタイプは税込価格のみ、1.8kgタイプは大きなフォントの税抜価格の下に小さいフォントで税込価格が表示されており、「消費者に誤解を与える」との指摘も出ている。同一ブランドで詰め替え用商品のほうがボトル入り商品より高くなっているというケースはしばしばみられるが、専門家は「おかしなことではない」という。なぜこのような価格設定、価格表示になっているのか。

 SNS上に投稿され話題となっている写真には、小売店の棚に「アタック」の2.5kgタイプ(税込698円)と1.8kgタイプ(同458円)が並んで陳列されており、特大サイズのほうのみ値札に「広告の品」と表示されている。1グラム当たりの単価をみると前者は約0.28円、後者は約0.25円と前者のほうが高くなっている。

 一般的には「大きい容量のほうが単価は安い」というイメージがあるが、このように逆のケースは多いのか。参考に「楽天西友ネットスーパー」上で複数の詰め替え用商品をチェックしてみたところ、以下のようになっており、基本的にはやはり「大きい容量のほうが単価は安い」傾向が確認できる。

・「ビオレu 泡ハンドソープ つめかえ用」(花王)
  430ml:357円(1mlあたり0.83円)
  770ml:548円(同0.71円)

・「Magica速乾除菌シトラスミント詰替」(ライオン)
  710ml:471円(同0.66円)
  1020ml:563円(同0.55円)

・「レノア 超消臭1WEEK 柔軟剤 SPORTS フレッシュシトラス 詰め替え」(P&G)
  380ml:269円(同0.71円)
  920ml:647円(同0.70円)

・「特選丸大豆しょうゆ」(キッコーマン食品)
  500ml:340円(同0.68円)
  1000ml:495円(同0.50円)

・「日清 キャノーラ油」(日清オイリオグループ)
  400g:312円(1gあたり0.78円)
  1000g:448円(同0.45円) 

・「エリエールトイレットティシュー(ダブル)たっぷり長持ちロール」(大王製紙)
  4ロール:456円(1ロールあたり114円)
  12ロール:878円(同73円)

 ちなみに「楽天西友ネットスーパー」では、「アタック」の1kgタイプは416円、1.8kgは753円、2.5kgは979円。1グラムあたりの単価はそれぞれ約0.42円、約0.42円、約0.39円となっており、1.8kgと2.5kgを比べると後者のほうが安い一方、1kgと1.8kgは同じになっている。

最終的な販売価格を決めるのは小売店

 なぜ、容量が大きいタイプのほうが、小さいタイプよりリットル単価が高いという現象が生じるのか。流通ジャーナリストの西川立一氏はいう。

「前提として、メーカーは商品に希望小売価格を設定してはいるものの、最終的な販売価格を決めるのは小売店なので、個々の小売店の事情に左右されます。容量が大きいタイプの商品はサイズが大きいため在庫スペースの問題から、できるだけ在庫を抱えたくない半面、絶対値としての販売金額は小さな容量のタイプより高いため、より多く売りたいと考え、セール品としてお得感を演出して目立つように陳列する小売店もあるでしょう。そして、ロケーション的に車で来るお客が多い店であれば、お客にとっても大容量を買ったほうが何度も来店する手間が省けるので、多少単価が高くても大容量のほうがいいとなることもあるでしょう。こうした事情が重なることで、大きな容量のほうが小さな容量より単価的に割高な価格で売られることになります。ですので、小売店とお客の事情を勘案すれば、こうした現象が生じることは、おかしなこととはいえません」

 単価計算すると詰め替え用商品のほうがボトル入り商品より高くなるケースもしばしばみられる。

「メーカーが、特定ブランドの新規顧客獲得のために、とにかく1度買って使ってもらってリピート客になってもらう目的でボトル入り商品の価格をぐんと下げるということは、珍しいことではありません」(西川氏)

 では、容量の大きなタイプは税込み表記のみとし、容量の小さいタイプのほうは税抜き金額を大きく表示し、税込み金額を小さく表記しているのはなぜか。

「正確な理由はわかりませんが、話題になっている写真をみると、大きな容量のほうの値札はサイズが大きく、赤文字でセール品である旨と価格が強調されており非常に目立っています。このように表示されていれば、お客は『オトクなんだな』と感じやすい。なので、なんらかの理由で大きな容量のほうを多く売りたいために、このようなかたちにしているのではないでしょうか」

 小売りチェーン関係者はいう。

「単価換算でオトクかどうかという判断基準をとても重視する消費者が多いのは事実ですが、仕事が忙しかったり小さな子どもがいたりして極力買い物に行く回数を減らすことを重視する消費者が多いのも事実です。一方、小売店側はもちろん単価を意識しないことはないでしょうが、結局のところ、仕入れ値に対して販売価格をいくらに設定して、どれだけ多くの利益を確保できるのかが重要なので、そこまで単価換算の価格というのは重要でなかったりもします。販売価格と単価換算が高くても買ってくれるお客が多いのであれば、店側がその商品の販売に力を入れるのは当然です」

(文=Business Journal編集部、協力=西川立一/流通ジャーナリスト)

西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー、ラディック代表取締役

西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー、ラディック代表取締役

流通ジャーナリスト。マーケティングプランナー。慶応義塾大学卒業。大手スーパー西友に勤務後、独立し、販促、広報、マーケティング業務を手掛ける。流通専門紙誌やビジネス誌に執筆。流通・サービスを中心に、取材、講演活動を続け、テレビ、ラジオのニュースや情報番組に解説者として出演している。

Twitter:@nishikawaryu

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