どんなに能力が高くても、一人の力など知れたもの。ビジネスを成功させたかったら、ほとんどの場合、「誰か」の力を借りることになる。
だけど、「誰か」がかならずしもあなたの意見に同意するかはわからないし、協力するための条件を提示されることもある。仲間に引き入れたいひとの興味を引く必要だってあるかもしれない。だから、ビジネスは「人を動かす力」がないと苦労することになる。
■短時間で相手に決断をうながす「ピッチ」の手法
そして、人を動かすのは、だいたいにおいて「言葉」だ。『Pitch 世界を変える提案メソッド』(Open Network Lab著、インプレス刊)で紹介するのは、まさにその力。言葉で人を動かすメソッド「ピッチ(Pitch)」である。
ピッチとは、相手の決断を引き出す提案方法。たとえば、スタートアップ企業が、どんなに素晴らしいアイデアを持っていても、他人からみたらどこの馬の骨かわからない会社である。ビジネスの提案のために与えられる時間は長くない。限られた時間の中で、機会を捉えて人の心をつかみ、相手を決断に導かなければならない。
では、ピッチと、いわゆる「プレゼン」は何が違うのか。
・時間
ピッチ…3~5分程度
プレゼンテーション…数十分~1時間程度
・目的
ピッチ…相手の決断を引き出す
プレゼンテーション…自らの提案が採択される
・場所
ピッチ…どこでも
プレゼンテーション…プレゼンテーションのために用意された場所
・対象
ピッチ…決裁権を持つ人
プレゼンテーション…担当者
・結果
ピッチ…その場で決める
プレゼンテーション…時間をかけて決断してもらう
ピッチの一番の特徴は、相手の予備知識や環境などの条件が整っていない中でも、その場で相手の決断を引き出すことをゴールにしているところだ。また、提案をする際に大切なのが、「相手に何をしてほしいのか」を明確に述べることだ。
相手によって目的はその都度違うものなので、それぞれの相手や目的に合わせて重点を絞ることも戦略の一つ。相手が「何に注目するか」「どう受け止めるか」に想像力を働かせて要点を絞り、短い時間でも伝えて決めることがピッチだといういい方もできる。
ピッチで重要なのは、正しい準備をすることだ。「語る言葉」「言葉より効果的に伝えるためのスライド資料」「語り手の話し方や振る舞い」の3つを準備する。語り手の言いたいことを話すのではなく、相手にどんな思考と感情の流れが生まれたら決断してもらえるかを見据えて話す必要がある。相手に伝えるだけでなく、相手が決断しなくては意味がない。そのために、これらの3つをフル活用できるスキルを身につけなければならないのだ。
自分のアイデアがうまく相手に伝わらない。そんな人でも、ピッチのメソッドは使える。自分の言葉で人を動かせるようになるためにも、ピッチのノウハウを本書から学んではどうだろう。一読すれば、ここで紹介した説明の意味がきっとわかるはず。そして、自分の仕事に取り入れてみようという気持ちになるかもしれない。
(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。