「ごんぎつね」「かさこじぞう」「おむすびころりん」「大きなかぶ」「スーホーの白い馬」――。これらの題名に懐かしさを覚える大人は多いのではないだろうか。これらは日本の国語教科書で読んでいるはずだ。
国語の教科書には、その土地、その時代の価値観や理想的な人生が込められている。その国の文化が見えてくるのが、国語の教科書なのだ。では、海外の国語の教科書は、どんな内容なのか。
『こんなに違う! 世界の国語教科書』(二宮皓著、メディアファクトリー刊)では、欧米から中国、韓国、ケニアまで、各国の教育事情を知る研究者11人が国語教科書のおもしろポイントを紹介。比較教育学の見地から、各国がいか子どもたちの成長と幸福を願い、教科書という制約の多い媒体にどうやってその願いを盛り込んでいるかをみる。
ここではフィンランドの国語教科書を取り上げよう。
フィンランドはPISA(OECDによる生徒の学習到達度調査)において好成績を残したことで、「学力世界一」と呼ばれることが多い国だ。
フィンランドの教育の特徴は「平等」と「卓越性」だという。国は、就学前から大学院に至るまで授業料を徴収しない「無償制」を敷き、学校では学習支援や補習などを通じて子どもたち一人ひとりの学習を手厚くサポートする。つまり、「落ちこぼれを出さない教育」なのだ。
フィンランドの教育で重要とされるのは、読解力である。
もともとフィンランドでは、読書や言葉を大切にする文化が伝統的に息づいているといい、国語教科書が目指したのは「読書に対するポジティブな気持ちを維持する」ことなのだという。
また、日本の「国語」に相当する言葉は、フィンランドでは「母語と文学」。文学が好きになるよう、国内外を問わず「楽しい作品選び」に力を注がれている。
たとえば、グリム童話やアンデルセン童話、フィンランドを代表する児童文学の「ムーミン」シリーズ、さらには「チョコレート工場の秘密」「ナルニア国ものがたり」といった映画化されたものも多い。
これは「文学と他の芸術領域との接点」について学び、「映画や演劇等のメディアを通じてフィクションに親しむ」基本方針が影響しているという。また、漫画も一部掲載されているのも特徴だ。
フィンランドの人々の高い読解力の要因には、国語の教科書によって培われた「豊かな読書文化」と「読書好きの国民性」が大きいのだろう。
あらゆる国の国語の教科書を巡っていくと、その国々の文化や特徴が見えてくるのが面白い。また、海外の国語の教科書を見ることで、日本の国語の教科書、教育の良いところも足りないところも見えてくるはずだ。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。